死子の質入れ

 貧乏で食べる物も着る物もない夫婦がいた。二人は年をとり、爺さん、婆さんになり働けなくなった。今までにもう、こっちの親戚あっちの親戚と、あるだけの身寄りから借りつくして返すこともできないでいるから、また借りに行くのもかっこ悪い。婆さんは爺さんに「わたしらもう食べる物がないが、どうしよう。いまさら借りる所もない。しょうがないからわたしの腰巻を質草に質屋からいくらかでも借りよう」と言った、爺さんはこれを聞いて「ああ、腰巻を質に入れるなんて、お前は女なのに、みっともない」と言ったが、婆さんは「あたしにはまだ身を隠す着物があるから、なんとかなる」と言った。

 そして婆さんは質屋に行った。質屋の雇人はこの古い腰巻を見ると「う−ん、お婆さん、旦那に聞いてみるから、ちょっと待ってくれ」と言って奥へ行き、旦那に「旦那さん、質入れの婆さんが来ました」と言うと、旦那に「質入れのことは、お前がやるのだ、俺じゃない」と言われ、すぐ帳場に戻って、この古い腰巻に金を幾ら貸せばいいのかと考えこむと、婆さんがひざまづいて哀願した。雇人は困ったが、やっぱりわからない、もう一度旦那に聞こうと奥に行って「旦那さん、やっぱり幾ら貸していいかわかりません、行って見てください」と旦那の手をひいて帳場に行った。

 見ると婆さんはまだひざまづいて頭をさげたままだ。旦那は「婆さん、何を質にするのだ」と聞いた、婆さんは「わたしの腰巻です、家には食べる物も金もないのです」と言った、旦那は「ベッ」と舌打ちすると「こんなボロな腰巻が質草になるか、どこに行ったって金になるものか」と腰巻を外に放り出した。婆さんは声をだして泣きながら立ち上がると、放り出された腰巻を拾い、またはくと歩きだして「神様、神様、もしわたしを金持ちにしてくださったら、こんな腰巻でも、たとえ死んだ子を質入れに来てもひきうけます。でも、わたしら夫婦には米一粒、薪一束もなく質入れもできません」言った。

 婆さんの真心が天と地に通じたのか、その晩、神様が婆さんの夢に現れて「婆さん、貧乏を嘆くな、お前の家の東にある山の麓に三つの瓶が埋めてある、明日、爺さんと一緒に行って掘るがいい、三つの瓶にはお前たち夫婦では使いきれないほどの金がある」と告げた、婆さんは夢から覚めると爺さんを起こして「爺さん、助かったよ」と言った、爺さんは「なにが助かっただ、明日の米もないのに」と言うと、婆さんが「白い髭のお爺さんが来てね、わたしに、東の山の下に二人では使いきれないほどのお金が入った三つの瓶が埋めてあるから爺さんと二人で明日、掘りに行けと言うんだよ」と言うと、爺さんは「でたらめを言わず、早く寝ろ」と言った。だが婆さんはこの夢を三回続けて見た。

 夜が明けた、婆さんは堀りに行くと言うが、爺さんは「馬鹿らしい」と相手にしない、婆さんは鍬を持って「あのお爺さんはわたしに三回言ったんだ、わたしゃ堀りに行く」と出かけた、婆さんが掘っていると爺さんも来て「おなかを空して、何やってんだ」と言うと、婆さんは爺さんに「掘ってごらん、きっとある、あのお爺さんはもしかすると神様なんだから」と言った、爺さんと婆さんは一緒に掘り始めた。しばらく掘って土がふかっとすると、本当に一つ瓶が出た、お金の入った瓶だ、また掘るとあと二つの瓶が出た。こうして老夫婦は救われ、金持ちになった。

 婆さんは「このお金で質屋を開こう」と言った、爺さんも「質屋を開いて、人助けをするのもいい」と言った。すっかり準備ができた。質屋開店の日に婆さんは朝早く起きた。やがて帳場の前に汚らしい男が来た、とても変な顔で何も言わずまた出て行ってしまった、雇人は驚き、心の中で「この人はなんて変な顔で汚ならしいのだろう」と思った。

 しばらくするとまたこの男は子供を抱えてやって来て「この質屋は今日開いたのか」と聞いた 「ええ、そうです」 「俺の質入れ受けてくれるが」 「今日は開店の日ですから、誰の質入れでも受けます」すると男は抱いていた子供を帳場の台に置いて「俺はこの子供を質にする」 「エッ、どんな貧乏でも子供を質にするなんて、駄目です、それに質屋は品物を担保にするんです、子供じゃ置き場がありません」すると男は子供を裸にした、見ると子供は死んでもう生きてはいない「この子供はどこへ置いても構わない」雇人は「旦那に聞いてくる、死んだ子供を何日もほうっておけば腐ってしまう、わたしには決められない」と言って、奥に行き今は旦那になった爺さんに「開店の日に死んだ子供を質入れに来ましたがどうしますか」と聞いた。

 爺さんはすぐ「駄目だ」と言うと、婆さんは爺さんを押し退けて「死んでる子供でもいいよ、男の言う通りのお金を渡しておくれ、決して額を減らすんじゃないよ」と言った、雇人は帳場に戻って「この子で幾ら欲しいのかね」と聞くと男は「銀十両欲しい」と言った、雇人が銭箱から銀十両をだして渡すと男は出て行った。旦那になった爺さんは「一日目から死んだ子供を質にとって嫌になり、怒って婆さんに「死んでる子はお前がどうにかするのだぞ」と言った。

 婆さんがこの死んだ子を抱くと子供は金の赤ん坊になった。   

         中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻上                        1995・5・3

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