犬はなぜ肝臓が一枚少ないか
牛、馬、ロバ、豚、羊はみんな肝臓が三枚あるのに、犬は二枚である。なぜか。これにはこんな話がある。
昔、老婆と息子と嫁の一家があった。息子は商売に出かけて、何時も留守で家には老婆と嫁の二人っきり、老婆は意地悪で、美味しい物はみな老婆が食べてしまい、嫁はあまった御飯やおかずを拾って食べられるだけである。
ある日、飼っている犬が人を咬み、打ち殺された。昔は飼犬が人を咬むと食糧二斗の罰だった。殺されたらしょうがないと、皮を剥いで、皮も肉も売り、残った心臓、肺、肝臓を吊り下げておいた。
老婆が「お前、鍋で蒸しておくれ」と言った。嫁は吊り下げた物を鍋にいれ、火をつけて蒸した。老婆が「犬の肝臓を持っといで、わしはここ二三日、目がかすんできたが、犬の肝臓を食べればよくなる」と言った。
ところが嫁は犬の肝臓を蒸すのを忘れていたので「お姑さん、犬の肝臓は茹でます」と言った、「お前、死んでしまえ、犬の肝臓を鍋で茹でて食べられると言うのかい」嫁はちょっと考えてから「お姑さん、犬の肝臓はほかの肝臓と違います、どんな肉だって茹でれば美味しいですよ」と言った、老婆は「じゃあいいよ、茹だったらわしが食べてみる、もし美味しくなかったら、お前の足を折ってやるからね」と言った。
嫁は肝臓が茹だるまでビクビクして落ち着かなかったが、茹だって取り出し嘗めてみるとと、アレ、少しもまずくない、とても美味しい。嫁は何時も少しも肉を食べていないので、我慢できず一口ぐらいいいだろうと食べ始めると美味しくてやめられなくなり、一枚みんな食べてしまった。すると老婆が「お前、牛にかいばをやりに行っておくれ」と言うので嫁はかいばを持って出たが心配になってきて、牛がかいばを食べているのを見ながら犬の肝臓を一枚みんな食べてしまったことをどうしょうと考えていた、牛は舌を伸ばしてかいばを“スルスル”と食べている「あ、牛の口には前歯がない………」そこで嫁は、姑に聞かれたらこう言おうと思いついた。
肝臓が茹だったので老婆は食べてみるとまずくはない、美味しい。だが心臓と肺はちゃんとあったのに、肝臓はどうして一枚足りないだろう「お前、肝臓を一枚盗み食いしただろう」 「わたしは盗み食いなぞしません」と嫁は答えた「この食いしん坊、盗み食いしないと言うのかい、肝臓は三枚なのに、二枚しかない、あと一枚はどうしたのさ、言ってごらん」 「お姑さん、知らないのですか“天に果てなく、地に果てなし、牛に前歯なく、犬の肝臓は一枚足りない”と言いますよ」 老婆はこれを聞いて「わしは小さい時、おっかさんのおっかさんから“天に果てなく、地に果てなし”とは聞いたが牛の口に前歯がないとは聞いたことがない、見て来よう」と牛小屋に行って、牛の口を開けて見ると、本当に前歯がない、そうすると犬の肝臓も一枚足りないのだとわかり、戻って「わかった、お前の言う通りだ」と言った。
こうして、嫁は老婆に叩かれずに済んだ。それで犬には肝臓が一枚少なくなり二枚になった。そして犬の肝臓は味付け用になり、何の肉を煮るにも犬の肝臓を割いて鍋に入れて煮るようになり、肉の味をよくした。
中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻上 1995・4・19