路平を人に踏ませる
男がいた、姓は路、名は平。路平は母親と暮らし畑を耕している。母親は毎日畑を耕している路平に弁当を運ぶ。
ある日、母親は途中の林で、見たこともない二羽の不思議な鳥が飛んでいるのを見た、鳥は木の枝に止まり、しばらくして地面に降りると二つの奇怪な卵を生んだ。母親はこの奇怪な卵を拾い、夜、息子が帰ると「お前、畑仕事をやめてこの二つの奇怪な卵を都へ献上に行ってごらん、もし本当に宝物であれば官職につけるかもしれない」と言い、卵を一つ出して息子の路平に渡した。路平もそれはいいと、卵を持って都へ上った。
路平は都に上りこれを献上した、お上はこれは貴重な鳳凰の卵だと、献上した路平に状元と同じ官位を授けた。路平は嬉しくなって、官職につくと母親にことを忘れてしまった。誰だって官職につけば母親を迎えに行くのに路平はしない。官職について家を構えると、母のことは頭の隅に追いやってしまったのだ。
息子が行ってから、何の音沙汰もないので母親は都に上って路平を捜すことにした。老母が都に入った丁度その時、都の大路を路平は従者を従えて来た、老母は人が「あれは路平様だ」と言うのを聞き、もう一度人に確かめてから「ああ、わたしの息子だ」と前に行って輿を止め、下僕が輿を下ろすと「あなたたちの主人はわたしの息子です」と言った、下僕はそれを見て「一人の老婆が、あなた様の母だと申しております」と告げた、路平が輿の垂れ幕を上げてみると確かに母親である、だが母親の姿はボロボロな着物てみっともない恰好である、路平は自分の母だといっては恥じをかくと思い「違う、こんな汚い老婆がわしの親だというのか、早く追い払え」と言った、下僕は「どけっ」と老婆を追い払うと、老婆は道端に倒れたが、輿は構わず大路を去った。
老婆は「恩知らず、お前はわしの息子ではないか」と泣き叫んだ。 この時、向こうから若い夫婦が来た、この夫婦の姓は旁、夫は旁人と言う。この夫婦が老婆が道に倒れたのを見た、これを見れば誰でも心配するのは当たり前だ、夫婦は都の中に住んでいてすぐ「あれ、お婆さんどうしたんですか、誰が突きとばしたのです」と聞いた、老婆は泣く泣く「わたしの息子の路平です」と今までのことを話した、若い夫も妻も怒り「あなたの息子があなたを知らないと言うなら、わたしがあなたの息子になりますがどうですか、よければわたしの家に行きましょう」と言った、老婆はこれを聞いて、世の中にはこんないい人もいる、そうしょうと、夫婦の家に行くことにした。
夫婦は老婆を風呂にいれ着替えをさせて「お婆さん、わたしの家にずっといてください、わたしたちが死ぬまで世話します」と言った。夫婦は老婆に優しくまるで本当の母親と息子と嫁のようだった。老婆はわしはもう一つ卵を持っているから、こんどはこの息子にやって献上させようと思い「旁人、あんたはわしによくしてくれる、わしは二つの卵を拾って一つは息子にやったが、もう一つはあんたにあげる、あんたもこれを献上して官職を授かればいい」と言った。旁人はこれを聞いて喜び翌日、老婆のくれた卵を持って朝廷へ行った。
朝廷に献上を申しでると、あ、これは一対の宝物だと、旁人も高い位を賜った、これが都の評判になり路平にも伝わった、路平はこの宝の卵はわたしの母のほか、持っているわけがない、あの時二つ拾い、俺が一つ使っただけだから、きっとやったにちがいない、路平はすぐ朝廷に参上して皇帝にこの卵はわたしのだと申し上げた。
そこで皇帝は路平に旁人と一緒に参内するように告げた。皇帝は旁人に「この卵は何処から持ってきたのだ」と聞いた、旁人は「母がくれました」と答えた。路平は「わたしの母がどうして卵を彼にやるでしょうか、わたしのです、それから、わたしは母を迎えます」と言った。旁人は「あの人はわたしの母だ、信じないのなら、母を宮殿に呼び誰が息子か言わせればいい、もしあんたを息子だと言ったらこの卵はあんたに返す、だがわたしを息子だと認めたらどうするのだ」と言った。
やがて老母が宮殿に参内した、老母は路平を見ると「あれがわたしの息子ですが、わたしの息子ではありません」皇帝はこれを聞き「自分の息子なのにどうして息子でないと言うのだ」と尋ねると老母は今までのことをありのままに話した。皇帝はこれを聞くと怒り、その場で路平の官位を剥奪し平民にした。平民にされると路平は官職がなくなり、財産も没収された。そして、路平は面目を失い自殺した。
人はこれを知り路平の死体を引取り路端に埋めたが墓碑を立てず普通に埋葬して、路端に石碑を立て石碑の上に“路平を旁人(他人)に踏ませる”と書いた。これはかかわりのない他人にも親不孝な路平を強く踏ませるためである。
中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻下 1995・3・21