路遥と馬力(一)

 路遥と馬力という義兄弟がいた。義弟の馬力は義兄弟の礼をとったあと義兄の路遥に長く会っていないので“ああ、随分ご無沙汰してしまった”と、路遥に会いに行った。馬力は久し振りに会った義兄や義姉を懐かしみ、路遥は義弟の立派な成長を喜んだ。路遥は馬力の丈夫そうで上品な体つきをみて、ふとあることを考えた。路遥夫婦は結婚して七、八年になるのに子供がなく、子供が欲しい、路遥は義弟の立派な成長ぶりに満足し、馬力の体を借りて世継ぎの子を得ようと思ったのである。

 路遥は妻にこのことを相談した。「馬力はいい男なのに、わしら夫婦はこのままでは干からびたしっぽか、細い枝になってしまう、お前考えてくれ」 だが妻は恥ずかしいと同意しない 「そんなことない、誰にも知れることではない、何を心配するのだ。わしら夫婦には行く末を強く支えてくれる子がないのだ」 妻は考えに考えてやっと夫の気持ちを納得した。
 夜になって、路遥は馬力に夫婦のこの心の中を打ち明けた。馬力は一瞬、それを聞いてハッとし、心の中でこれはまずい、どうしようと思ったが、しばらく考え笑いながら「わかりました、義兄さんがそれでいいなら承知しますが、条件が三つあります」と言った、路遥は「承知さえしてくれれば、どんな条件でも受ける」と言った。

 馬力は「第一は義兄さんとわたしは義姉さんから離れて住み、百日待つこと、それまでわたしたちは同じ部屋に住み、同じ物を食べ、片時も離れず、わたしと義兄さんは影のように離れないこと」 「それはいいよ、わかった」「第二の条件、わたしが食べたい物は何でもお金に構わず買ってくれること」 「それもいい、高い安いは言わない、金はある」 「第三の条件、百日たって義姉さんに月の回りがきたら、遅れずにきっとわたしに知らせること、この三つの条件を聞いてくれれば、わたしは義兄さんの言うことを承諾します」路遥は 「よし、これで決まった」と言った。

 二人は約束したあと、路遥と馬力は同じ書斎で寝起きし同じ物を食べ、毎日外に出て、山や川で遊んだ。馬力は食事を変えようと言い、すべて滋養のある食べ物にした、義兄弟がこうしているうちに、早くも百日が過ぎた。そして路遥の妻に月の回りがきた。路遥は嬉しくてしょうがない、待って待ってやっときたのだから。本当に一日を一年に思うほど子供が欲しかったのである。路遥はすぐに書斎に行って「馬力、いいぞ、お前の義姉さんに月の回りがきた」と言った、馬力が「じゃあ、あと三日のばしてください」と言うと、路遥は「よし、百日も待ったんだ、三日ぐらいなんでもない」と答えた。
 しかし、翌日早く路遥が起きてみると馬力は何も言わずに何時のまにかいなくなっていた。え、どういうことだと路遥は怒り、お前は親友ではないか、俺はお前に百日もついていたし金も使い料理も食べさせた、それなのに行ってしまった。お前は本当に友情がないと思ったが、すでに馬力は行ってしまったので、仕方がないと、荷物を持って母屋に戻った、こうして何日か過ぎるうちに、路遥の妻は身籠もり、十か月して太った大きな男の子を生んだ。路遥は大喜びで、馬力、お前は俺の願いに答えてくれなかったが、俺に子供が生まれたぞと心の中で思った。

 やがて誕生一か月の祝いの日となり、親戚やら友人、知人が来て、誕生一か月の“満月”の祝いが盛大に開かれた。ちょうどこの“満月”の祝いの最中に馬力が来て、人が「やあ、義兄弟の馬力が来た」と言っているのを聞いた路遥は心の中で“馬力、臆面もなく来たものだ”と思った。馬力は入って来るなり路遥を見ると両手を組んで「おめでとう義兄さん、義兄さんの息子の誕生を祝います」と言った、路遥は「オ−」と言ったが取り合わず、迎える態度もしめさないまま「馬力、あんなことしてよく来られたな」と言った。
 馬力は笑いながら「義兄さん、わかってください。友人は五輪(君臣父子兄弟夫婦朋友)の交りの一つです、頼まれたとはいえ、わたしにはあのような不仁不義はできません、不道徳で禽獣のすることではないですか、わたしは来た時に義兄さんの体が弱わり、目が虚ろで、ひどく精力を消耗していると思い、義兄さんに百日間、栄養をとって貰ったのです、この百日で義兄さんが健康を回復し、体力も充実したので、気力を持って母屋に戻ったほうがいいと思い、わたしは帰ったのです。そして義兄さんに可愛い息子が生まれたのです」と言った。

 それを聞くと路遥夫婦は「アイヤ−」と親指を立てて感動し、続いて馬力に“五体投地”をし、万感の思いこめて「よくわかった、これこそ“路、遥かにして馬の力を知り、日、久しくして人の心を知る”だ」と言った。

         中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻下                       1995・3・14

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