冗談を言う

 王三と李四という男が東北の昌黎にいた。二人は一緒に東北の商家に店員として働きに来ていたのである。王三は李四より年上である。ある時、李四が帰省することになり、王三が「帰りに俺の靴を頼まれてくれ」と言い、李四は「いいよ」と承知した。

 李四は帰省すると、親戚、友人の所を回ってから王三の家に行った。王三の女房は喜んで迎えてくれた「李さんお元気ですか」 「ええ」 「なんですか」 「わたしが帰る時にご主人から靴を持って来るように頼まれましたが、できていますか」 「ええ、もうできています」 「じゃあ、わたしが預かります、すぐ帰りますから」 「まあ、ゆっくりしてくださいな」李四がなんと言っても王三の女房は聞かず、食事やお茶の支度をはじめ、枕をだし 「横になって休んでいてください、すぐ支度しますから」と言うので、李四は横になって本をひろげた。

 王三の女房は棚の上の粉条(はるさめ)を取ろうとして厚いズボンがずれ、おなかがでて、桃の種ほどのほくろが見えた、それが李四の顔の方だったので下からはっきり見えた、とっさに李四は覚えていて帰ったら王三をからかってやろうと考えた。
 李四は食事をご馳走になり、靴を預かって帰った。  翌日、李四は東北の商家にに戻った。王三が「靴を持って来てくれたか」と聞いた「持って来たよ、それより、俺はあんたの家でご馳走になり、一晩とめて貰ったよ」王三はびっくり、「俺の家に泊まったって、俺の所は年寄りもいないし女房一人きりだぜ」 「人がいれば泊まれないよ」 「本当に俺の家に泊まったのか」 「本当に泊まったよ」王三はもし本当だったら李四がそんなこと言うわけないと、ハハハと笑いながら「泊まったら、泊まったでいいさ、俺は離れていて帰らないのだから、一晩くらいどうってことない」「俺は本当にあんたの家に泊まったんだ、何と言ってもあんたのおかみさんは俺を帰さなかったんだ、ところでおかみさんのお腹にほくろがあるな」 「お前、俺の女房の体をみたのか」と王三は驚いた。

 これで王三は李四が本当に泊まったのだと知った、そうでなければあのほくろをはっきり覚えているわけはない。よしわかった、今にみろ。  何日か過ぎて、王三は商家の旦那に何回も帰省したいと求め、旦那も「いいだろう」と言った。王三は短剣を用意した、そして何時とは書かず、帰るという手紙をだした。王三の女房は家の中を片付けたり、掃除したり綺麗にして、いつかいつかと毎日待っていたが夫はなかなか帰らなかった。

 ところで、王三の女房は日頃から海南観音を拝み、お線香をあげ、夫の無事やお金がふえることなどのご利益を願っていた。今晩もまたお供えものを上げ、願いごとを唱え、お祈りしていると、王三が帰って来た。王三は怒りを一気に発して、短剣を持つと「この野郎」とばかり女房の心臓を突き刺した。そして女房の実家に押しかけた。  義父は娘の婿が来たので出てみると、婿は何があったのか蒼白な顔をしている、それでも「何時帰って来たのかね」と聞くと、「くだらぬことを言うな、お前さんの家はいい娘を出したね」 「なんのことかね」王三は女房が李四と寝たことを話した。「だから俺は女房を刺し殺したんだ」 「刺した、じゃあ死んだのか、どうして娘が家風を乱したんだ」義父は急いで車を仕立て王三の家に駆けつけた。

 二人が家の中に入ると、なんと王三の女房は髪をすき顔を洗っている、どうしたんだ、死んだのではないのか。女房は「あたしは毎日あんたを心配しながら、家事をして、お祈りしてから、少し寝てしまったから何も知らない」と言った「お前は李四を家に泊めたのか」 「あたしは李さんを引き止めて泊めやしないし、李さんもご飯を食べてすぐ帰ったわ」 「李四はどんな具合に横になったんだ」と老父が様子を詳しく聞いて「じゃあ、また粉条をとるようにしてみろ」と言って、老父は横になってすぐわけがわかった。

 「剣はどこだ」 「見なかったわ」  仏殿の垂れ幕をあげると短剣は仏像の胸に刺さっていて、抜けない。老父は「これは仏様のお陰だ、仏様を大事にしたからだ。大法師、和尚様に念仏を唱えてもらえばとれるだろう、それで罪は償われる、冗談がこんな大事件を起こしたのだ」と言った。    

         中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻下                          1995・3・8

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