17 昔話と自己領域
昔話の語り手と聞き手との最も理想的な距離は、爺や婆と膝に抱く孫との距離ではあるまいか。
人にも動物のテリトリ−に似た自己領域というような一定の距離があって、他人がそれを越えて近づくのを忌避するという。
私は昔話の語り聞きは互いの自己領域をやや侵すくらいで語り聞くのがいちばんいいと思っている。それが最も語り聞く心を通じあえる距離だと思うからである。
しかし、それに不安を覚える人は多いに違いない。だが、もともと語り手と聞き手との間には緊張感があり、それが語り聞くなかでほぐれ、語り聞く心が通じるようになるのではあるまいか。
昔話の語り聞きは自己領域のなかでの行為である。(1991年5月)