13 昔話を語る声
昔話は語り手の内的な言葉を声にする自己表現である。語り手は声で自分自身の内部を昔話に託して伝える。 声で自己の内部を伝えるのを訴えると言うなら、昔話の語りは歌うと言ってもよい。語り物に音曲がつくのもそれだろう。音曲は演技だが昔話は演技ではない。昔話に託した自分の内部を声にするのみである。
物語の書き手は内的な言葉(想像)を文字(言葉)で映像化する。自分の想像を言葉で絵画的に書き表わす。しかし、昔話の語り手は内的な言葉を声で象徴的に語る。決して昔話を映像的、絵画的に語りはしない。昔話に託した自分の内部を声にするのみである。
昔話に託した自分の内部を語る声、それが昔話である。(1991年3月)