10  昔話と創造的退行      

 遠く済南に独りいる。夜、静かに目を閉じる。私は心の奥底へ旅立つ。昔話が待っているのだ。      

 ある時は犬婿、蛇婿となり、ある時は絵姿女房、食わず女房を妻とする。もしこのまま意識に戻ることがなければ犬婿として果てるか、食わず女房におののくかである。      

 私は昔話を語り聞く時、精神を退行にむかわせる。フロイトは退行を病的としたが、ユングは創造的退行もあるとした。      

 昔話を語り聞くことは、心の深層で昔話を体験し自らの生活を個性化させることである。      

 昔話は精神の創造的退行である。(1991年1月)                              

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