鉛のお金

 昔、息子二人、娘一人の老父母がいた。老父は老母が60歳ほどの時に死んだ。老父は頑固で生前、息子を家から出さなかったので老父が死んでから分家した。

 そして老母は息子二人が一か月づつ面倒みることになった。昔から“息子二人は馬を飼うようなもの、息子三人は家をバラバラにする”と言うが、娘は老母が、長男の家でも、次男の家でもろくな面倒をみていないのを悲しんで“こんな風に弟二人の家に引き回しては母は長生きでないかも知れない、母の面倒をみたいけれど、わたしは女だし、母も貧乏で何もないから心配だ”と何時も嘆いていた。娘の女の子も 「うちでお祖母ちゃんをみないなら、あたしだって母ちゃんが年寄りになってもみてやらないし、母ちゃんが先に死んだって、父ちゃんはみてやらないよ」と父親に文句を言った。
 父親は「わかった、わかった、あしたお祖母ちゃんを迎えに行こう、誰でも何時かは死ぬんだ、死ぬまでうちにいればいいさ」と言った。

 こうして娘は老母を家に連れて来た。すると近所の人たちが陰で「親を息子がみないで、娘がみるなんて」と噂した。老母はこんな陰口を聞いて「娘や、他人の口がうるさいから、わたしゃ息子の所へ行くよ、どうせ何時かは死ぬんだから」と言った。
 娘は「母さんの面倒をみるのは、欲張りな嫁さんだから、わたしがいいことを考えてあげる、わたしが結婚するとき母さんがくれた鉛の対の燭台を溶かして木の型に流して丸い餅のような鉛の板を作ってあげるわ」と、三斤ほどの二つの鉛の燭台を二三十枚の鉛の板にし、これを帯を中に縫い込んでカチカチにして老母の体につけてやった。
 それから娘は老母に「母さん三円あげるから、一円で人力車を雇って上の弟の家に行きなさい、うちの下の息子が魚屋になって上の弟の家の前に行くから十斤の魚を買って下の弟と上の弟の家に五斤ずつの魚をあげる、もう一円は上の弟夫婦が可愛いがっている子にやるのよ、そうすれば母さんは死ぬまで弟たちがよく面倒みてくれるわよ」と言った。それを聞いた老母は娘がふざけているのではないかと思ったが、娘の言うとうりに人力車を雇ってでかけ、娘の下の息子はあとから魚を担いで行った。

 長男の子供が窓から人力車を見つけ「母ちゃん、お祖母ちゃんが人力車に乗って来たよ」言った、何時もは荷物を棒に括りつけて来るのに、こんどはどうして人力車で来たのだろう、「帰って来た、帰って来た」と子供がトットッと駆けて行き、「お祖母ちゃんは車引きに大きなお金を渡したよ、俺見ちゃった」と言うのを聞くと長男の妻はお義母さんはお金があるんだと急いで出てきて「お義母さん、お帰りなさい、荷物は重いからわたしが持ちます」と言った。
 祖母は門の前にいる魚屋を見ると「お前たち魚を買ってやるからお皿を持っておいで」と言った、息子の女房たちは二三斤だと思って小さなお皿を持って来ると、祖母は「駄目駄目、それじゃはいらないよ五斤づつ買うだのだから」と言い、孫に「おばあちゃんが、一円あげるからお前、大きなお皿をもっといで」と言った、この子は喜んで取ってくると「ヤ−イ、おばあちゃんが魚を買ってくれた、一軒に五斤ずつだって」と叫ぶと、次男の女房もこれを聞いて「お義母さん早くわたしの家に来てください」と言った。

 その晩、息子二人が話し合ってから、老母に「わしら二人でおっかさんを順番にみるけど、どうする」と言うと、老母は「一か月ずつ回るよ、初めはどっちでもいいよ」と言うと、兄が「俺は長男だから、先にしょう、それからお前の所へ行けばいい」と言って自分の息子に「お前、おばあちゃんと一緒に寝な」と言った。老母は夜になったら帯をしっかり結んでおくように娘に言われていた。孫は帯の袋にさわり「おばあちゃん、これなあに」 「今は教えないが、おばあちゃんが死んだら、お前にやるよ、お前はわたしの一番の孫だからね」その子はこれを両親に話した。女房はこれを聞くと「お義母さんはお金を持っているのだ、義弟の家にやらないようにしよう」と言った。

 一か月過ぎて、弟が「兄さん、一か月たったから、おっかさんはうちに来るのかい」と聞くと「いいよ、おっかさんは何処にいても同じだ、それにお前のとこは貧乏で、俺のうちの方がいい」と答えた。これを弟の女房が聞くと、義母はお金を持っているのだとわかり、義兄の家の老母の所に行き、髪や足を洗ってやったり、美味しいものを買ってやったりした、ギョウザを作るとお椀に山盛り持って行って、義母の気嫌をとった。

 一年、二年と過ぎ、何年かすると老母は年をとりボケてきてやがて病気になった。娘が来て老母の鉛の板を取り出し、二人の弟に見せ「これはおっかさんが一生かかってためたものだから、死ぬ前には渡せないが、死んだらわたしの取り分はいらない」と言って、鍵のついた小さな箱に入れた。二人の弟はこれは銀貨だ、ずっしりと重そうだと見た。
 やがて老母は死んだ。兄弟は棺桶を二人の金を出し合って買い葬式をだした。長女の娘は泣きやむと、鍵を上の弟に渡し「品物は二人で分けて」と言った。老母が死んだ時、泣いたのは娘だけで、ほかの者はみんな楽しそうにしていた、葬式がおわれば銀貨がたんまり入るのだ。兄弟は葬式から戻り、兄弟で銀貨を山分けにすることにした、長男の女房が「先ず開けて出してみたら」と言うと、長男はうなずき「お前、開けろ」と帯を床の上にひろげ、女房に鋏で切らせたが、でてきたのは鉛の板だった。
 みんな開いたが全部が鉛の塊であった。次男夫婦はあの箱を開けたと聞いて駆けつけ、どれも鉛の板だとわかると、いままでの損をどうしようと泣き出したすると、長男夫婦も泣き出しとうとう四人で泣き出した。

 近所の人々は、あの家では老母が死んだといって喜んでいたが、こんどは泣き出した、どうなったいるのだと不思議がった。兄弟は長女の姉を呼んで聞いたが、長女は「わたしがどうして、お金かどうかわかるのよ、わたしにどうしろと言うの」と言いいおわると弟たちを相手にせずに帰ってしまった。  

        中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻下                          1995・3・7       

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