9 昔話・「述而不作」
私は済南に、白川静著「孔子伝」を持って来た。済南が孔子の生地曲阜に遠くなかったからである。いまその書に導かれて昔話を考える。(以下引用の文は同書による)
「述べて作らず。信じて古を好む。ひそかに我が老彭に比す。という孔子の語があるが、(中略)『述べて作らず』とは、祖述者であって創作者ではないという意味である。次の句はその理由の説明とみられる。そして末句は、その一生の典型を老彭に求めるという。(中略) しかしこの老彭が何びとであるのか従来定説がない」
菲才を顧みず言えば、これは昔話の語り手の学ぶべき語である。
『述べて作らず』 語り手は昔話を語るのであって創作するのではない。
『信じて古を好む』 さる昔、ありしかなかりしか知らねども、あったとして聴かねばならぬぞよ。これを誦ずれば自から明らかである。
『ひそかに我が老彭に比す』 語りの典型を何に求めるかは語り手の問題である。(1991年1月)