三世代のやもめ

 昔、ある家に祖母、母、嫁と三世代の妻がそれぞれ夫を亡くして一緒に住んでいた。  三人のやもめがそれぞれの夫のために焚いた線香の灰はもう三つの麻袋一杯になるほどであった。
 ある日、三人のやもめはおしゃべりをはじめた。やもめの嫁が「わたしたちは三世代で暮らしていたのに、残されたのは三代三人のやもめなんて」と言うと、やもめの祖母も「これには、わたしも口惜しい思いをしているよ、こんな道理をなんとかしてくれる人はいないものかね」と言った、やもめの母が「西方の弥勒仏の所へ行って、この道理の善し悪しにきまりをつけてもらおう」と言った。

 翌日、三人のやもめは大きな車に、線香の灰がつまった三つの麻袋を載せ、その上にやもめの祖母が座り、母と嫁のやもめがかわるがわるに車を押して行った、何処へって、勿論、西方へだ。  どんどん、どんどん行くと一人の男に遇った。この男は牛刀をさげ、全身血だらけで、三人のやもめに向かってやって来る、やもめの嫁が驚いて「お母さん、あの人は何をするのでしょう」と言うと、やもめの母は「あの男は回族で牛殺しだよ」と言った、この男はもともと牛殺しで十一人の子供がいたが、みんな男の子で女の子がいない、男は怒って 「誰でも男の子がいなければ、男の子を望むのに俺はどうだ、俺が牛殺しだからか、面白くない、どうして十一人の男の子を養い、女の子がいないのだ」と言い、西方の仏に聞きに行こうとして、三人のやもめに出遇ったのだ。

 男はやもめたちに「お前さんたち、何処へ行くのだ」と聞いた「わたしたちは三世代のやもめです、これから西方の弥勒仏にわたしたちはどうして三世代やもめなのか聞きに行くのです」 「それは丁度よかった、俺もあんたらと一緒に行こう、俺は牛殺しで十一人も男の子がいるが女の子がいないのはどういうわけか聞きに行くところなのだ」 「駄目ですよ、血だらけで、刀をさげている人と一緒なんて」 「かまうものか、あんたらみんな車に乗れ、俺が押す、俺は力があるんだから」やもめの三人は“よし、この男は力があるらしい、真ん中に祖母を乗せ、二人で両端に乗って男に押させよう”と考えた。こうして、男は車の縄を首にかけて、三人のやもめと三袋の線香の灰を綿花を運ぶようにして行った。

 行って行って、何か月か行って、暖かい春になり花が咲いた。やがて道は大きな山にふさがれて行けなくなった、みんなは“ここを越えたら西方ではないか”と言った「どうしよう」男が「あんたらこの山の麓で煮炊きしてくれ、わしは薪を取ってくる、それから道を探そう」男は薪を集めに早速、山へ入った。山の上を歩いて行くと一人の老人がしゃがみこみ、小刀で木の根っこをほじくり返している。「お爺さん、そんな小刀じゃいくらやっても駄目ですよ、俺が掘ってあげよう」と言って、何時も提げている牛刀で老人の掘っている物を掘ってやった。「お爺さんこれは何ですか」 「人参だよ」 「人参と言えば宝物じゃないですか」 「そうだ、宝物だ」 「お爺さん、ちょっと聞きますが、あなたは何時もこの山を歩き周り、山を越えるのはどうするのですか」 「この山は毎日昼に裂け目ができて一人だけ走り抜けられる、普通の体では抜けられないのだ」 「それならどうしたらいいですか」牛殺しは四人がどうしてここへ来て、どこへ行くかを話した。「こうしょう、わしがお前さんたちに茄子を一つづつやろう、この茄子を鍋で七七、四十九日煮る、わしが行って、どの人の茄子が煮えたかを見る、そしてよく煮えた茄子の人を連れて行こう」 「わかりました」老人は四個の茄子を牛殺しに渡した、見ると少しくらい煮ても軟らかくなりそうもない、鉄の茄子ではないかと思い、頭をあげると老人はもういなかった、男は「これは神様だ、しょうがない」と言って帰った。

 帰ると、やもめの嫁はすぐ「それ何の玩具」と聞いた、男は「人参を掘っているお爺さんがいたから、人参を掘ってやった」 「掘るだけでどうして取って来なかったの」 「人参を掘ってやって、何を取って来るんだ」 「何言ってのよ、爺さんを殺して人参を取ればよかったのに、あれは高いのよ」 「そりゃ駄目だ、あのお爺さんはみんなにこれを煮ろと鉄の卵のような茄子を四つくれた」やもめの嫁が手に取って見て驚いた、茄子の上に張氏、李氏、王氏と名前が付いているのだ「この人わたしたちと会ったことがないのに、これは神様だわ」 「お爺さんは、七七、四十九日煮ろ、そうしたら来ると言った」 「わかった、煮よう、あんた薪を取って来て」

 男は毎日山へ行って、太い枝、大きい木を抱えて来た、朝から晩まで馬のように汗を流して働いた、そして男の集めた薪でこの鉄の茄子を煮た。男が薪をとりに出かけると三人のやもめは牛殺しの茄子を掬い上げて鍋の蓋の上におき「牛殺しのを混ぜて煮るとわたしたちのがよく煮えないから、上に置こう」と言った、男が帰ってくるのを見ると急いで男の茄子をまた鍋の中にいれた、こうして煮て、煮た。お話だから日が経つのも早い。

 やがてあの老人が来た、老人は前と同じように、龍の頭を彫った杖をついて来た、「牛殺しの男は」「山へ薪をとりにいきましたよ」と言っているところへ男が戻って来た「お爺さん、いらしゃい、誰の茄子が煮えていますか」老人が棒でパンパンと叩くと、祖母のは堅く、母のは少し軟らかい、“あんた人参を取って爺さんを殺せばよかった”と言った嫁の茄子は一番堅かった。牛殺しの茄子は箸が通った、三人のやもめは牛殺しの茄子が軟らかいのをみて驚いた、老人は牛殺しに「お前、わしについてお出で」と言った。

 三人のやもめは泣きはじめた「ひどいですよ、わたしたちはそれは遠くから来てこんなに長く待っていたのに」と言うと老人は「お前さんたち三世代を弔ったのはよかったが心がよくなかった、人をそこなって自分が得をしようとした、自分たちのが煮えないからと牛殺しのをだしてしまったではないか、そうだろう、お前たちの心が悪い、三袋の線香の灰も無駄になった、三世代を弔ったのもご破算だ」そう言いおわると老人は牛殺しを連れて行ってしまった。  

        中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻下                        1995・2・18

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