
蛙の訴え
むかし、ある村に青豆葉という男がいた。
ある日、青豆葉は河で十数匹の蛙を捕え、ひもでくくっり、手に提げて帰った。それを東北から来た旅人が見て「お前さんそんなに蛙をどうするのかね」と聞いた。「家へ帰って食べるのさ」 「どうして蛙を食べるのだ」 「腹が減っているからさ」 「お腹が空いているなら肉を買って食べればいいではないか」 「俺は金がないのだ」と青豆葉が答えると、旅人は蛙が可哀相になって「じゃ二十枚の銅銭をやるから、蛙を放してやってくれ」と、旅人は背負った包みをほどいて銅銭二十枚を出して青豆葉に渡した。
青豆葉は金を貰うと、蛙を一匹ずつひもからはずして逃がした。それを見て旅人が開いた包みを結び直し、肩にかけようとした時、青豆葉はその包みを奪い、旅人を河の中へ突き飛ばした、旅人は波間に浮き沈みしていたがやがて見えなくなった。青豆葉は奪った包みを背負って逃げた、中にはまだ金が入っていたのだ。
翌年、地方長官がここ通ろうとすると、街道に沢山の蛙が口に青豆の葉をくわえて並び騎馬の兵士たちを通さない。長官は「道が広ければ両側を行け、狭ければ片側を行け、田畑の苗を踏まず、鞭をなくしても楊柳の枝を折るな。この軍律を守らねば四十の鞭打ちにするぞ」と、押し通ろうとした。
すると、人々が何か言っている。「何事だ」 「長官、道をふさいでいるのはどういうわけか、口に青豆の葉をくわえた脚の切れた沢山の蛙です」と言った。「どれどれ、わしが見よう」と長官は蛙の群れを眺め、「蛙が何か訴えているらしい、お前たち男に代わって訴えるなら南に向いて頭を三度ふれ、女に代わって訴えるなら北をむいて頭を三度ふれ」と言った、すると蛙たちは南を向いて頭をふった。
長官が「オ−、男に代わって訴えるのだな、すると、お前たちが告発するのは青豆葉だな」と言うと、蛙たちは頭をふった、「青豆葉が人を殺したのか、殺された者はどこにいるのだ」すると、蛙たちはケロケロ鳴きながら河の入江に飛び込んだ。長官は下役人に、「この村の青豆葉という名の男を逮捕しろ」と命令した。
だがこの村にはいない。村人が「向うの村に青豆葉という男がいます」と言った。その村に行って二、三の人に聞くとすぐわかった。そうだ“人は死んで名を残す、雁は飛んで声を残す、人は名がなければ、どこの誰だかわからない、雁が飛んで声を残さなければ、春秋の四季がわからない”名前があればすぐわかると、青豆葉は逮捕された。
「青豆葉、お前は犯した罪を知っているのか」 「いいえ、わたくしめはどんな罪も犯してはおりません」 「だが現に蛙がお前を訴えておるのだ、多くの脚の切れた蛙がお前を訴えているのだ、殺された者は入り江に沈んでいると言っているぞ、拷問を受けたくなければ白状せよ、国には法があるのだぞ」青豆葉は心の中で“何が法だ、この馬鹿長官めにわかるわけない”と思い、「していません、わたしめは天に背くことはしておりません」と言った。
「青豆葉、お前本当に何もしていないか」 「していません」 「よし。騎馬兵士、この入江の水をかきだせ」と、長官の命令で入江の水をかきだすと死体が出てきた。「青豆葉、これでも知らぬと言いはるか、蛙たちはみな死骸を抱いているではないか、白状せねば命はない」青豆葉は冷や汗をながし白状し、命で償いをさせられた。
四老人故事集 1994・12・29