雌鶏が金槌を食う

 文字占いの易者先生が街にでていました、この易者先生の卦はとてもよく当たりました。
 ある人が真珠をなくし…“これは竹林の竹の子ようなつまらないものではない、それに銀杏より大きい真珠だ”…と、この易者先生にみてもらうことにしました。
 先生は「わしの文字占いはおみくじにして箱に入れてある、あんた一つ引いてくれ」と言いました。真珠をなくした人は箱の中から一つおみくじ取ると先生に渡しました、先生はそれを見て「あんたが引いた卦は“酉”だ、真珠は“酉”つまり鶏の中にある、小さいから雌鶏に食べられたのだろう。急いであんたの家の雌鶏を捕まえて砂ぶくろを触ってごらん、真珠は砂ぶくろの中に長くおくと溶けてしまうよ」と言いました。

 真珠をなくした人は家が街から遠くないので走って帰り、家の雌鶏を捕まえ砂ぶくろを触ってみると確かに丸いものが入っていました。その人は庖丁で雌鶏の砂ぶくろを裂いて真珠を取り出し水で洗い、それを持ってまた街へ行きました。「先生、先生の占いは素晴らしい、この真珠、本当に雌鶏に食べられていました」と言い、酒と肴に占いの礼金を添えて丁寧に差し出しました。

 離れた所からこれをちゃっかり見ていた暇な男が「鶏が食べたなら、鶏の腹の中からでるのは当たり前だ、少しも占いは当たってないじゃないか」と考え、家に帰り、ただ“酉”の字だけのおみくじを一生懸命作り、箱一杯に入れました。
 翌日、男はあの易者先生が来ないうちに、先に易者先生の居場所を陣どってしまいました。そこへ鉄の金槌をなくした鍛治屋がやって来ました。
 「先生、こんにちは」 「こんにちは」 「わたしの鉄を打つ金槌がなくなりました、急いでどこにあるか占ってください」 「このおみくじを引きなさい」箱のおみくじは全部“酉”の字ですから、鍛治屋の引いたおみくじは“酉”です、易者先生になりすました男はわざと意味ありげにそれを見ると「お前さんが引いたのは“酉”の卦“酉”はつまり鶏だ、その金槌は雌鶏が食べたんだ、帰って鶏を捕まえ砂ぶくろを裂けばでてくるよ」 「ええ、そんな占いがあるか、百斤もある鶏だって鉄を打つ金槌は食べられない。あんたの占いはでたらめじゃないか」と鍛治屋が大声で男をせめていると、ちょうどあの易者先生が来ました。

 先生は鍛治屋におみくじを引かせず、手を合わせ占いを始めると「なくなった金槌はいつも手元に置いて使うものだから、あんたの身辺にある筈だ、壁の間かもしれないが壁の間では狭すぎる、金槌はあちこちに持っていくから、ふいごの中だ」 「あそうだ、今朝ふいごの継ぎ目が壊れ、そこへ金槌をつめておいたのだ」鍛治屋はそう言って家に帰り金槌を見つけると、また街へ戻り「先生、先生の占いは当たりました、たしかに金槌はふいごの中でした」と言ってすぐ占いの礼金を差し出し、また急いで帰り鉄を打ちました。

 男はまたそれを見て戻り、易者先生がいない時にまたその場所に陣取っていました。三人の仲間で商売をする男たちが天秤棒をなくし、互いにお前が盗んだ、お前が隠した、いやお前が家に担いでいった……などと言い争い、やがて「喧嘩はやめて、誰が天秤棒を持っているのか、易者先生に占ってもらって、はっきりさせよう」ということになり、三人は一緒に贋の先生の所に来て「先生、わしらを占ってくれ」と言いました。「おみくじを引きなさい」男たちが引いたおみくじを贋の先生に渡しました、贋の先生はそれを受け取るとまたわざともったいぶって開けると「これは“酉”つまり鶏だ、天秤棒は雌鶏が食べたのだ」 「あんたの言うのは無茶な話だ、天秤棒を雌鶏が食べられるわけがない」 「もしかすると、ふいごに中だ」 「どうしてふいごに天秤棒が入るのだ」 「じゃあ、天秤棒は壁の間だ」三人は怒ってしまいました。

 そこへまた易者先生がやって来ました、「どうしたんです」三人の男たちは「わしら三人、仲間で商売していますが、天秤棒がなくなり、互いにお前が持っていったと言い合い、誰が持っているのか、どうしたのか、判らなくなったのです。先生、どうかわしらの誰が天秤棒を持っているのか占ってください」と言いました。易者先生は手を組んで占うと「お前さんたち三人は仲よく商売している仲間で互いに思いやりを持っている、あんたたちの天秤棒は飲み屋にあるよ、酒を飲んで飲み屋に忘れ誰も持ってこなかったんだ、早く飲み屋に行ってごらん」 「おー、そうだ思い出した、あの時だ、俺たち一緒に飲み屋で酒を飲む時、天秤棒を端に立てかけたんだ」

 三人は急いで飲み屋に行きました、すると飲み屋の親爺が天秤棒を見つけ、三人が取りに来るのを待っていたのでした。三人は天秤棒を担いで戻って来ました。三人は「先生の占いは素晴らしい、本当に先生が占ったとうり飲み屋にありました」と言いました。男はまたこれを見て帰り、街に易者先生が出いなうちに、また出ました。

 さて、ある嫂と義妹が喧嘩しました、どうしたのかと言うと嫂の指輪がなくなったのです。嫂は義妹が盗んだと言い、義妹は盗まないと互いに譲らないので、街の贋の易者の所に行きました。贋の易者は「指輪は雌鶏が食べた」と言いました。「内の鶏はみんな死んでいないわ」 「それではふいごの中だ」 「ふいごなんてないわ、隣の家にだってありゃしないわ」 「それなら、あなた方は飲み屋で酒を飲み、飲み屋で指輪を落としたのだ」二人は席を立って「わたしたちは良家のでですよ、飲み屋なぞ行きません、あんた考えたって判るでしょ、でたらめ言わないでよ」と怒りました。

 するとまたそこへ易者先生が来ました。「どうしたのです」 「わたしの指輪がなくなり、わたしは義妹が盗んだと言いますと義妹は盗まないと言うので喧嘩になったのです。先生、義妹が盗んだのか盗まないのか占ってください」と嫂が言うと、易者先生は「あなたが嫂さん、あなたが義妹さん、あなたたち義姉妹は仲よく賢い、あなたの指輪は義妹さんが盗んだのではありません、菜っぱの塩漬けの瓶の中に落としたのです」と言いました「そうだわ、今朝、お義母さんに言われてわたしは菜っぱの塩漬けをしたから、たぶん塩漬けの瓶の中に落としたんだわ」嫂は急いで家に帰り、塩漬けの瓶の中を探ると指輪がでてきました、嫂は取り出すと、水で洗い綺麗にしてまた街へ行きました。

 嫂は「義妹じゃありませんでした、先生の占いは少しも違っていませんでした、わたしが塩漬けの瓶に落としたのです。先生のおかげです」と言い、贋の男に「あんたの占いは面白かったわ、雌鶏が食べた、ふいごの中だ、そしてわたしたちが飲み屋で落としたなんて、あんたのような大道易者みたことないわ」と言いました。義妹は「あなたたちお二人の易者先生のお一人は本物、お一人は贋物」と言い、贋のあの男を指さして「あんたがその似非易者」と言いました。  

          四老人故事集                                     1994・12・19

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