狼と老婆
昔、ある老婆が嫁いだ娘の家に行った帰りに道で狼に出会った。
狼は老婆の着物の裾をくわえ、引っぱって行こうとする。「お前、わたしを何処へ連れて行くんだい、わたしを食べるなら、ここで食べておくれ」と老婆が言うと、狼は頭を横にふり、巣穴に連れて行った。
老婆が巣の奥を見るともう一匹の狼が苦しそうにお腹を抱えて転げ回っている、老婆はすぐ、母狼が子供を生むのだとわかり、お腹を揉んでやると小さな狼が四匹生れた。だが老婆は狼はもともと赤い肉を食べても白い糞をする恩知らずだ、わたしは食べられてしまうかも知れないと思った。しかし狼はまた老婆の袖をくわえて引っぱり村まで送ってくれた。
ある晩、狼が老婆の家の土塀を越え、恩返しのつもりなのか、死んだ人間の子供をくわえて来た、鍬を持って出た婆さんは「わたしゃ、豚や羊の肉は食べるがこれは食べないよ、お前、帰って女房や子供に食べさせな」と言って追い返した。
ところがまたある晩、狼はきれいに毛をむしりとった小羊をくわえて持って来た。こうして老婆は毎日羊の肉を食べることができた。
隣の婆さんがこれを見て「お前さん、そんなに沢山の肉をどこから持ってきたんだい」と聞きに来た、老婆は狼との出来事をみんな話し「これは狼が恩返しにわたしにくれたのさ」と言った。これを聞いた隣の婆さんは肉が食べたくなり、わたしも肉にありつこうと老婆が話してくれた所へのこのことでかけた。だが話は逆になり隣の婆さんは狼に食われて死んでしまった。
狼は人を食べても頭は食べない、狼は隣の婆さんの首を高粱畑に投げ捨てた。何日かたって、隣の婆さんの孫の大猪が母親に「婆ちゃんは何処へ行ったのか」と聞いた「叔母さんの家に行ったよ」 「でも三日も四日もどうして帰って来ないのだろう、俺みて来る」と大猪は叔母の家に行って聞くと「お前の婆ちゃんはずっと前から来てないよ」と言った、これを聞いた大猪は婆ちゃんに何かあったのだと急いで湖のほとりの草刈り場に行き、そこの高粱畑に捨てられていた婆さんの首を見つけた。大猪は祖母の首を抱えて泣きながら家に帰った。
村中の人は驚き、みんなで網と鉄のさすまたを持ち大猪の婆さんの仇を討とうと「捕まえた、捕まえた」と口々に叫びながら湖のほとりに行った、まだ捕まえない前からこう叫ぶのは狼をおどかして捕まえるからである。
狼は驚いて逃げ出したが、うまい具合に箱を持った男に会い、狼は頭を地につけて助けてくれという様子をみせた。「お前、隠してくれと言うのか」と男が言うと狼は首をふってうなずいた。男が箱を開けると狼はおとなしく中へもぐりこんだ、男は箱を閉めその上に腰を下ろした。
しばらくすると、あたりが静かになったので男は「もういい、出て来い」と箱を開けてやると狼は飛び出し、男の周りをぐるぐる周り男を食べようとした。男は「恩知らず奴、たった今、俺がお前を助けてやったのにお前は俺を食うというのか」と怒鳴った。ちょうどこの時、草を刈っていた子供が「狼が来た、捕まえろ」と叫んだ、狼は驚いてまた男に頭を下げた、男は箱を開けると「入れ」と言った、狼は素直に箱に入った。
男は箱を閉めて上に乗り、大声で「早く来い、ここに狼がいるぞ」と叫んだ、村人がみんなで周りを囲み、箱に網をかけ、鉄のさすまたで箱を開けると、狼がパッと飛び出した、飛び出しても駄目だ、網の中だ、狼の体には網がからみ丸まって大きな団子になり、村人の棍棒や鉄のさすまたで打ち殺された。
四老人故事集 1994・12・10