狼のような娘

 あなた、実の娘に望みをかけていますか。実の娘だって狼のようなのもいますから気をつけたほうがいいですよ。
 むかし、ある老人が山海関の東や万里の長城の北へ出稼ぎに行き帰って来ました。家に帰るには遅くなったので、嫁いだ娘の家に行きました。
 この老人は十何年もの東北地方の出稼ぎから帰って来たのですから、近所の古い年寄りが来て「おお、先輩、帰って来たのかい」と言いました。「ああ、帰って来たよ」 「泊まるのかい」 「ああ、娘の所に行って泊まるよ」 「それなら、あした遊びに行くよ」 「ああそれは有難い、わしらは長い間会っていないからとても懐かしいよ」と話し合いました。

 ところが、この老人は山海関の東や万里の長城の北で稼いだお金を持っていましたので、娘夫婦は悪心を起こし、泊まりに来た父親を夜になって、大きな鍋で煮て殺してしまい、骨は庭の穴に埋め、そぎ取った肉は豚の餌箱に捨ててしまいました。
 この老人の息子は父親が帰って来たと聞いて、翌朝、暗いうちに姉の家に向かいました。長い間会っていない父親に早く会いたかったからです。姉の家に着くと姉夫婦はまだ起きていませんでした。「姉さん、まだ起きていないの」と言うと「まだよ」と声がしてから、姉が起きてきて門を開けました。姉は昨夜の悪事で寝ていないから明るくなるまで寝ていたのです。

 「あんた来たの」 「お早う、お父さんが帰った来たんだって」 「え、お父さんだって、何処に来たの」 「俺はお父さんが姉さんの内に帰ったと聞いて来たんだけど」 「来ないわよ」と姉は言いました。弟が座わって休んでいるうちに、姉は子供に「お前の叔父さんにご馳走するんだから早く鶏を捕まえておいで」と言いました。弟が「姉さん、俺はお客さんじゃないから鶏をつぶさなくてもいいよ」と言うと姉は「ああ、お前はめったに来ないから鶏を殺してお前にご馳走するのよ」と言い、鶏を殺しました。
 鶏は“ポタポタ”と白いお腕に一杯の血をしたたらせました。姉は子供に「お前、叔父さんと二人で遊んでおいで、わたしは叔父さんとお前にお昼ご飯を作ってあげるから」と言いました。 
 姉の子が弟の手をひくと、弟は姉の子と外に出ました。「お前のお母さんが殺した鶏の血はお椀一杯になったよ」 「叔父さん、教えてあげようか……」 「なに」 「叔父さん今なんて言った」 「お前のお母さんの殺した鶏の血はお椀一杯なったと言ったよ」 「フ−ン、でもお祖父ちゃんからでた血のほうが多かったよ」 「お祖父ちゃんが血を沢山だしたって」 「お祖父ちゃんの血は桶に二杯でたよ」

 こうして娘夫婦が父親を殺したことが判り、弟が都に訴えると、姉夫婦は捕えられ死刑にされ、この子だけが残されてしまいました。実の娘なのにあきれたものです。娘夫婦は父親のお金に目がくらんだのです。

 あなた、実の娘なのに父親を殺すなんて酷いとは思いませんか。

          四老人故事集                                       1994・12・8

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