嫁の後悔
ある人がこんな話をした。ある処に自分たちは表の間に住み、奥の間に年をとった姑を住まわせていた若い夫婦がいた。
ある時、その嫁が実家へマント−を作って持って行こうとマント−を蒸しあげた。その時、蒸しあがったマント−の一つを、姑の“おまる”の中に落としてしまった。嫁はそれを拾うとわきに置き、飯どきになってそのマント−を 「はい、マント−ですよ」と何も知らない年老いた姑に食べさせると、嫁は別のきれいなマント−を食べ、遠くもない実家にマント−をいれた籠を抱えて行った。
急いで歩いていると、目の前に一枚の書き付けがヒラヒラ落ちてきたので“おとっつあんは字が読めるから読んで貰おう”と拾って籠にいれた。
実家に着くと父親が「おや、お前来たのかい」と言って出てきた、「こんにちは、おとっつあん、あたし道で書き付けを拾ったんだけど何って書いてあるの」と拾った書き付けをだした。
父親はそれを見ると「お前何をしたんだ、“おまる”に落としたマント−をお姑さんに食べさせたので、お前を雷さまが裂くと書いてあるぞ、持ってきたマント−を持って早く帰れ。急いで内に帰ったらすぐ、中庭にアンペラをしいて麦を干し、ほかの片付けをせず、お姑さんをおぶって行き、涼しい門の下で休ませろ。雷さまが来たらお前の孝行なのを見せるのだ。干した麦を取り込まずにお姑さんをおぶって涼ませに行くのだぞ。間違えるなよ」と言った。
嫁は驚いてグズグズしていられず、すぐ大急ぎで駆け出した、走りながら見ると西の空に雲がわきあがっている。走って家に帰るとすぐ中庭に麦を干し、すぐ奥の間に行き「お姑さん、あたしがおぶって涼しい所に連れて行きます」っと言った。すると姑は「それより早く麦を片付けたほうがいいよ、雨が降ってくるよ」と言った、嫁は「心配しないで」と言い、姑をおぶって門の下の涼しい所に行き「麦は雨で濡れれば、天気に干します、あたしはお姑さんをおぶって涼しい所で休すませてあげます」と言った。
雷神がやって来てこれを見、「わしが来たのに干した麦を取り込まず、姑をおぶって涼ませに行くとは、こりゃ孝行者じゃ、裂くのはやめよう」と言った。
それからこの嫁は姑に不孝なふるまいをしなかった、ということである。
四老人故事集 1994・12・7