肉を割き孝行する
貧しい家の老母が病気になった。分家して所帯を持った息子たちが来て、老母が肉饅頭を食べたいと言うので、僅かな金を出して兄嫁に「老母に肉饅頭を食べさせてくれ」と言って帰った。
貧しい家の女房は“肉どころか食べる粟さえないのに”とその金で粟を買い、急いで粟粥を作って老母に食べさせ、子供たちにも薄い粥をやった。
隣の人は老母が肉饅頭を食べたがっているのを聞いて小麦粉を持ってきてくれた。でも肉がないので女房は自分のふくらはぎの肉を削りとって肉饅頭を作った。子供たちはあまり驚きもせず、老母が孫に「お前のおかあちゃんは何の肉をいれたのかね、どうしてこんなにいい匂いがするのだろう」と聞いても何も答えなかった。
女房が「なにも言わずに食べてください」と言うと、老母は肉饅頭を食べながらまた「お前のおかあちゃんは何の肉をいれたのかね、どうしてこんなに美味しいのかね」と孫に言った。
すると女房はやはり「なにも言わずに食べてください」と言ったが、子供は「おばあちゃん、おかあちゃんのふくらはぎの肉をいれたんだよ」と言った。
それを聞いて老母は「え、なんだって」と言って“アッ”と声を上げて泣き出し「むごい」と言った。隣の人が来て「あの粉で何を作ったの」と聞くと、老母は「あなたがくれた粉でうちの嫁は嫁のふくらはぎの肉饅頭を作って食べさせてくれた」と答えた。
このことが世間に知られるようになり、やがてお上の耳に入り「自分の肉を割いて肉饅頭を作り、老母に食べさせるとはなんと孝順な女房であろうか」と、女房に薬と食を与え、「孝順な女房である、この金で何でも買い老母に食べさせよ」と賞金を授けた。
世間の人々はみんなこの女房を“徳女”と呼ぶようになった。本当に孝行なことである。
四老人故事集 1994・10・26