指輪の由来

 昔、ある所に老母と若い夫婦の三人が仲よく暮らしていました。新妻は賢く働き者で家畜の世話、掃除、洗濯、炊事なんでもそつなく家事をこなしましたので、老母は喜んでいました。結婚してから夫婦喧嘩をしたこともありません。こうして三人は幸せに暮らしていました。
 ところが、夏になって老母は突然、嫁の態度が変わったことに気がつきました。何もしたがらないし、話したくもない様子で、前のようではありません。頼んだこともその通りにしないので、おかしいと思っていましたが二三日過ぎると、嫁は何もしないばかりか、何時までも寝ていてすぐには起きて来なくなりました。それに夏なのに手を洗うにも、頭を洗うにもお湯を使うのです、夏に農村の何処に薪を燃して沸かすお湯を使う家がありますか。老母はだんだん気になってきて、遠回しにあてこすったり、嫌味を言ったりしていましたが、とうとうはっきり面と向かってこの息子の嫁を罵り、すべてにけちをつけ、何かにつけて文句をつけるようになりました。

 こうしているうちに、この新妻は病気になり、だんだん重くなってきましたが老母は嫁が嫌いになり医者にも診せませんでした。そしてついに若い嫁は死んでしまいました。 老母は自分が苛めたから息子の嫁が死んだなどとは思ってもいません。
 老母は息子に「お前の嫁さんは働き者で利口だったのに、どうしてあんな怠け者になったのかね」と聞きました。息子は妻がいた頃には老母に何も言えず、妻が死んでから恋しくて毎日妻を思い出していましたので、溜め息をつくと、一気に「あの賢くて働き者の妻は身籠もって悪阻がひどく、辛かったのに羞しくてそれが言えないでいると、おっかさんが、怠け者になったと言ったので、それを苦にしてとうとう死んだんだ、どうしてそれがわからなかったんだ」と言いました。

 老母はそれを聞いて驚き「こんなことになったのは、わたしが悪かったからだ」と、とても後悔しましたが、死んでしまったあとではしょうがありません。
 やがてまた老母は息子に嫁を娶らせました。そして「また過ちをしないように、こんどはお前のお嫁さんが月のさわりや、悪阻になって羞しくて言えなかったら、何かの物で表せば気をつけるよ」と言いました。

 こう言うわけで嫁は鉄の破片を細工して指にはめ、それを「戒指」と呼んだんです。本当ですよ。(註・中国語では指輪を「戒指」jiezhi−指に気をつける−と書く)
 嫁がこの鉄の破片で作ったものを指にはめるようになってから、姑は息子の嫁が月経になったり、妊娠したりして具合が悪くなったのを誤解しないですむようになったのです。

 それから女はみんな嫁に行くとこの「戒指」をはめるようになり、それが今まで伝えられてきたのです。今では「戒指」も銀のものや金のもの、赤い宝石のついたものになりましたがね。  

      中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻(上)                         1994・10・15

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