猿の夫婦

 昔、ある所に大地主の夫婦がいた、千町歩の畑、大きな屋敷、もちろん財宝は長持ちに一杯、それでいてなんでも惜しがる。二人の下女には庭の掃除、花の打ち水から、かわやの始末、昼は食事の支度、夜は自分たちの足までもませる、そしてやり方が悪いの、やらないのと叩いたり叱ったりするので二人の下女は一日中隠れて泣いていた。  
 ある日、二人の下女が庭を掃除していると、表門に真っ白な髭をのばした一人の年老いた乞食が杖をつき竹籠を抱えて来て「哀れな、哀れな年寄りです、何か食べ物を恵んでくだされ」と言った。二人の下女はそっと「お爺さん、わたしたちは召使いで何もしてあげられないから、早く行って」と言った「わしは本当にお腹が空いているので、主人に何か恵んでくれるように言ってくだされ」 「早く行かないと怒鳴られたりぶたれたりするわよ」それを聞いた爺さんは「乞食に何も恵みたくないならそれでいいが、罵ったり、殴ったりすることはないだろう」と不機嫌そうに言った、二人の下女は地主がどんなに酷く自分たちを怒鳴ったり、ぶったりするかを一つ一つ爺さんに話し、話しながら泣きだした。爺さんは二人の下女が可哀相になって「これを飲めばお前さんたちの主人はもう、お前さんたちを叩かなくなるよ」と言い、一つずつ薬をくれ乞食の爺さんは出て行った。

 二人の下女は見つからないように薬を飲むと、間もなく綺麗いな娘に変わった、それを見た地主夫婦はとても不思議がった、そればかりか亭主は下心を持って下女たちを火のない部屋から暖かい母屋に寝かした。その晩は女房が怖くて亭主は下女に手出しはしなかった。女房は一晩中、二人の下女がどうして綺麗な娘になったのかと考え眠れなかった。翌日朝早く下女を呼び、どうして綺麗になったのかと聞いた、二人の下女は嘘をつかずありのままを女房に話すと、地主の女房は下女に自分にその薬をよこせと言った。二三日して乞食の爺さんがまた来たので、二人の下女は地主の女房が言ったことをみんな乞食の爺さんに話し、どうかお願いだから薬をくれと爺さんに頼んだ、すると爺さんは「そうこなけりゃ、わしとお前さんたちの気は晴れないよ」と言って薬をくれた。

 爺さんからもらった薬を、下女はうやうやしく主人に渡した。寝る時になって二人の下女は丁寧に二人の主人に薬を飲ませてから母屋の戸を閉めて寝た。
 するとまだ夜更けにならないうちに、何かが部屋の戸をガリガリ引っ掻く音がする、二人の下女が誰と聞いても返事がなく、ただ引っ掻く音がするばかりである、二人は明かりをつけて戸を開けて見ると、二つの全身が毛で覆われたものが見える、目をパチパチさせて見ると、犬でもない、人でもない、驚いて主人を呼びに行くと主人の寝床には誰もいない、ただ布団が滅茶苦茶になっていて、その二つの生き物が後ろ足で立ち、二人の下女に向かってお辞儀をすると這うようにして山へ行ってしまった。

 二人の下女はやっとこれは主人夫婦があの薬を飲んで変わったのだとわかった。後の人はこれを猿と呼んだ、今でも猿の胸に骨の塊があり、話せないのは人々は薬を飲んだせいだと言っている。

         聊斉 * 子                                         1994・5・21

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