しめ鳥

 昔、ある所に夫婦と徳生という男の子がいた、幸せに暮らしていたが、間もなく母親が死んで、祖母が徳生の面倒をみることになった。男手は飯の支度や繕い物もできないから農家は女手がないと不便で父親は後妻を娶ったが、仲人に騙され、器量が悪くて、意地悪な後妻だった。この女はもう十何人もの男と別れた金持ちの家の娘でまた無理に婿を探していたのである。

 女は後妻になると三日もしないうちに本性を現して亭主を罵り始めた。後妻の父が金持ちなので徳生の父親は何も言えなかった。
 三年たって後妻に男の子が生まれ万宝と名づけられた。やがて万宝は大きくなって12歳になり、家の手伝いもするようになった。
 徳生は祖母の所にいたが、この一年に祖母が亡くなり戻って来た。後妻は徳生を嫌い、何時も徳生の死を考えて、いいものを食べさせず、朝から晩まで徳生を苛めた。けれども徳生と万宝は仲がよく、万宝は美味しいものを母親に隠して兄に食べさせた。後妻はそれでも相変わらず、ただ徳生が死ねばいいと思っていた。

 ある日、後妻は胡麻の種を鍋で炒り、徳生と万宝を呼んで、炒った胡麻を徳生に、炒らない胡麻を自分の子の万宝に渡して「お前たち、西山に胡麻を蒔いておいで、しめ鳥に食べられないようにしな。おわった者から帰っておいで。おわらなければ帰って来るんじゃないよ」と言いつけた。
 二人は携帯食を持って行った。徳生は胡麻が美味しそうなので、一粒口にいれてみるといい香りがする、何度も口にいれて一つ一つ噛みしめた、弟の万宝も自分の胡麻を口に入れて「どうして俺のは美味しくないのかな」と兄に聞いた。
 徳生は「そんな筈はない、お前、俺のを食べてごらん」と言った。万宝が兄の胡麻を食べると美味しいので「取り替えよう」と二人は胡麻を取り替え、食べながら歩いた、食べ飽きた頃、二人は山に着いて、種を蒔いた、胡麻の好きなしめ鳥の一群が飛んで来て万宝の蒔いた胡麻をほじくって食べた。何日か過ぎて徳生の蒔いた種が芽をだしたが万宝の蒔いた種は芽を出さなかった。
 また何日か待ったが出てこない。二人は心配して「どうしたんだろう、なぜ芽が出ないのだろう」と言った、万宝の蒔いた胡麻が芽を出さないので二人は母親叱られると思い、二人は谷川に飛び込んで死んでしまった。

 父親は息子を捜しに行き息子が谷川で死んでいるのを見つけたがどうして死んだのかわからなかった。すると二羽のしめ鳥が飛んで来て水に浮んだ胡麻を啄ばんで「クウ、クウ、かあちゃんが胡麻炒ったなんて知らなかった」と囀った、するともう一羽のしめ鳥も「クウ、クウ、かあちゃんが胡麻炒ったなんて知らなかった」と鳴いた。父親は土から芽の出ない胡麻の種をほじくり出して食べてみると炒ってあった。父親は家に帰り後妻を殺して逃げた。

 このことは直ぐ四方の村々に伝わった。それから人々は徳生と万宝はしめ鳥になって今でも「クウ、クウ、かあちゃんが胡麻炒ったなんて知らなかった」と鳴くのだと伝えている。

        聊斉 * 子                                          1994・5・14

 はじめに戻る