河の淵を埋めた鎌
山東省に大地主がいた。土地は広くてどれだけあるかわからない、金銀財宝も数えきれないほどあった。地主は武力として、屋敷に多くの用心棒、小作人を置いて、金と権力を持ち、誰も大地主に抵抗できなかった。
毎年、麦を刈る季節になると、遠近を問わず人々が出稼ぎに来たが大地主は何人でも雇い入れた。なかには二三百里離れた所からも来た。出稼ぎ人はみんな自分の鎌と、麦を束ねる縄を持って来て、山のように大地主の麦を刈った。大地主はホクホクしながら出稼ぎ人が刈り取った麦の高を帳面に記し、あとでその帳面に照らし合わせて出稼ぎ人に手間賃を渡した。
ある年また麦を刈る季節がきて出稼ぎ人が来た、麦を刈りおわると帳面をだしたが、一人五銭の手間賃しか払わない。これでは帰りの旅費にもならないと、仕方なく出稼ぎ人たちは二人の世話役を選び地主に掛け合うことにした。出稼ぎ人の世話役は大地主の前に跪いて頼んだが、大地主は椅子に座ったまま取り合おうともせず、いくら頼んでも一銭も増やさない。
夜になって地主が背もたれ椅子に座り扇子で扇ぎながら涼んでいると、出稼ぎ人たちは交渉が成立しなかったので、みんな一斉に跪いて手間賃を増やしてくれと頼んだ、二三千人の出稼ぎ人が跪いているので、大きな板のようになった。「旦那さん、情けをかけて、いくらかでも手間賃を増やしてください、これでは家へ帰る途中で飢え死にしてしまいます」出稼ぎ人たちは跪づいていたので、みんな膝がガクガクしてきた、だが大地主は怒って、大声で怒鳴りちらした。あまりに罵るので出稼ぎ人たちは我慢できず、前にいた一人が突然跳び上がって鎌を振り上げるや大地主斬りつけた、続いて人々は一斉に鎌を振り上げた。後ろにいた出稼ぎ人たちも、みんな立ち上がって「やっつけろ、やっつけろ」と怒鳴りだし、大地主は防ぎきれず大勢の鎌で斬られて死んだ。
大地主の家の者が小作人と用心棒を呼び、出稼ぎ人たちを取り囲み「鎌に血のついた奴を捜せ」と叫んだ。すると大地主を斬りつけた出稼ぎ人たちは一斉に鎌を河の淵に投げ捨てた。それを見ると用心棒たちは「鎌を捨てた奴をつかまえろ」と叫んだ、これを聞くと出稼ぎ人たちは鎌をまた一斉に河の淵に捨てた、捨てられた沢山の鎌は淵の半分を埋め、大地主の家では結局誰が主を殺したのか捜しだせなかった。
聊斉 * 子 1994・5・10