潘大牛
わしらの村の昔話をするからお前さん聞いておくれ。
時代はわからないが、まあ、ある時代だ、どっちにしろ昔のことさ。わしらのこの村の真ん中に一つの井戸があった。この井戸の水は微かに赤味があって、その頃、わしらの村人はみんなこの水を飲んでいたそうだ。この水を飲むと潘家には世代ごとに一人の傑物がでると伝えられていた。
ある世代に潘大牛という傑物がでた。この潘大牛は体が大きく力があって、猛々しいうえ武芸にも優れていて誰もかなわなかった。大牛は天を恐れず、地を恐れず、皇帝すら恐れない人で、不正を憎み、誰でも権力をかさに人を虐げる者があれば容赦しなかった。
ある年に県知事が賄賂をとり裁判を曲げて決したことがあった。それを聞いた大牛は怒って役所の衛門に行って不満をぶち上げた。県知事は大門を閉めて聞かず、すぐに朝廷に大牛が謀反を起こそうとしていると告げた。皇帝はすぐ聖旨を下し出兵して大牛を捕らえさせようとした。すると大牛は一喝して兵士の耳を震いあがらせ、たちまち県知事を殺害してしまった。
兵を率いていた大将は逃げ帰って、皇帝に「駄目です、捕らえられません、大牛を捕らえられる者はおりません」と訴えた。皇帝は驚いて大臣たちと相談した、一人の大臣が「買収がいいでしょう、人を遣わして銀子を与え、大官に封じて大牛を従わせるのです」皇帝はそれはいい方法だと、すぐ車に銀子を積み、大将軍に封ずる聖旨を使者に待たせて遣わした。潘大牛は正直な性格であったから「この潘大牛は腐った銀子は受け取らぬ」と言い、大将軍にもならぬと皇帝の聖旨を破り捨ててしまった。
皇帝の使者は逃げ帰ってこれを伝えると皇帝はまた大臣たちと相談した。ある大臣が「村の者を買収してあいつを毒殺しましょう」と言うと皇帝は「それはいい」と言ったが、わしらの村には買収されるような者はいなかった。しかしとうとう村の潘二の猿めが買収された、この潘二の猿めは悪いやつで、毒薬を潘大牛の家の水瓶に入れ、潘大牛を毒殺してしまったのだ。
聊斉 * 子 1994・5・5