貧乏神
ある老人から昔こんな事があったと聞いた。
ある所に老夫婦が住んでいた。二人はもう年老いて、思うように動けず暮らしていけなくなった、前は畑を借り小作もしていたのだが、だんだん畑仕事をする力もなくなり年貢もだせず、畑を取り上げられてしまった。
仕方がないので老夫婦はあれこれと苦労し、豆腐を売るようになったが、食うや食わずで、今にも飢え死にしそうだった。ある年の暮れの夜明け方、隣近所はみんな福の神を迎えに行ったが爺さんは怒って「わしはずっと福の神を迎えていたのに、それでもこんなに貧乏だ、今年は福の神を迎えず貧乏神を迎えてやろう」と言い、老夫婦は提燈を下げてでかけ、町はずれに来て、迎えの紙を燃していると、遠くから人が歩いて来た、近くまで来たのを見るとボロボロなものを着た乞食であった。
婆さんは恨めしそうに「お前さんがあんな事を言うから本当に貧乏神が来ちゃったじゃないか」と言うと爺さんは「わしがわざと貧乏神を迎えたんだ」と言って「これはこれは、貧乏神さまどちらへ行かれますか、どうかわたしの家で年を越してください」と言った、乞食は何処へ行くあてもなかったから一緒について来た。
家に着くと老夫婦は乞食を他人のようにはせず、余った豆腐かすと豆の皮を三人で一緒に食べた。そうして暮らしているうちに乞食は体力もついてきて、豆腐を作りをしたり、山で草を刈ったり、雇い人夫として働いたりして、だんだん金を稼ぐようになった。老夫婦は無駄に使いもしないので金もたまって、畑も買った。それから三人の暮らし向きはよくなるばかりで、食べるにも着るにも困ることはなくなった。隣近所の人々はみんな「あの家じゃ本当の福の神を迎えた」と言ったとさ。
聊斉 * 子 1994・5・5