作男と若番頭
山東省平度県に張世庄という村があって、白という大地主が住んでいた。白は多くの作男を雇っていたが、作男に食べさせるのが惜しくて、いつも生煮えの餅を食べさせていた。こうすればあまり多くは食べられないからである。それで作男たちは一度も腹一杯餅を食べたことがなかった。
ある日、三人の作男は畑から帰って、腹が空いてたまらず年の若い作男が「飢え死にする、飢え死にする」と大声で言いふらした。これを地主の若番頭が聞いてこの若い作男を叱りつけ、「お前は俺に恥をかかせる気か、俺は今まで飢えたことなぞないぞ」と言った。
作男たちは癪にさわり、なんとかしてあいつを懲らしめてやろうと相談した、若い作男が「あいつを畑で待ちぶせしてみんなで殴ってやろう」と言うと、年を取った作男が「それはまずい、もし老番頭に知れたら、俺たちの命がない、俺にいい考えがある、若番頭は猟が好きだから、明日やつけてやる、まあみんな見ていてくれ」と言うと、畑に植えた苗を沢山ひきちぎっておいた。
夜になって若番頭に「東山の畑に植えた苗を兎がみんな食い荒らしているから、若番頭さん早く捕まえたら」と言った、翌朝早く朝飯を食べ、若番頭と作男たちは東山へ行った。あたりを走り回ったが一わの兎もいない、年とった作男は「若番頭さん、ここで待っててください、わたしが山の上で探して見つけたらすぐ大声で知らせますから」と言って、ゆっくり休み、昼すぎて北山から大声で「兎がいたぞ…オ−イ早く……」と叫んだ。
若番頭はこれを聞いて槍を持って走り出した、作男は「あんたが遅いから、みんな山の下に逃げてしまった」と言い、二人の作男はまた山を下り、あちこち探し回った、日はもう西に傾いて若番頭は腹が空いてきた。すると二人の作男が高粱餅をかじりながらやって来て、年配の作男にも一枚わたした。若い作男が「若番頭さん、これは空きっぱらな者が食べるんだから、あんたは食べないでしょう」と言い、四人は家に向かって歩いて行った、途中で若番頭は腹が空いて我慢できず、恥ずかしいがしかたなく若い作男に「俺にも一枚くれ」と言うと若い作男は「あんた前から飢えたことないんじゃないの?」と言った。若番頭は文句も言えず唾を飲み込んだ。
聊斉 * 子 1994・5・4