昔から平度地方にこんな一つの伝説がある。
 ある山里に一人の爺さんが住んでいた。その頃はまだ人家が少なく、こちらに一軒、あちらに一軒とあるだけで、今のような村はなかった、だがそのかわりと言うか狼は多かった。
 さて爺さんは家族が誰もいない、みな死んでしまったのである。しかし家の中はまことに賑やかだ。犬、羊、猫、兎、二羽の鶏、まだある二羽のアヒル。だから餌を食べる時は大騒ぎだ、鶏が叫び、犬が吠え、羊もメ−メ−、かなり遠くまで聞こえる賑やかさである。

 ある日、爺さんが山へ柴を刈りに行くと、岩の間に一匹の小さな狼がいたので家に連れて帰った。爺さんは「殺生は罪だ」と言い、小さな狼を縄でつなぐと首に小さな鈴をつけ、一日中「小青、小青」と呼び、毎日餌をやった、ある時は市で買った肉を食べさせ、爺さんは狼を可愛がった。やがて狼は大きく育ち、牙も生えた。

 ある日、爺さんが市からまた肉を買って帰り食べさせてやると、狼は肉が足りなかったのか、牙をむきだし爺さんの手をガブリと噛み血が流れた。爺さんは狼に「わしはお前の体を大きくしてやったが心は育てなかったなあ、放してやろう、これからは自分で餌を探せ」と言って、縄をほどき狼を放してやった。

 二日すぎて爺さんはまた市に出かけ帰るのが遅くなったが、家まではまだ半里ほどの道で鈴の音を聞いた、すると窪地から一匹の狼が飛び出してきた、見ると爺さんが飼っていたあの狼だ「お前小青じゃないか」と言うと狼は爺さんに跳びかかってきた、年取った爺さんにはもう狼を防ぐ力はなかった、二度三度と跳びかかれた爺さんは倒れ、狼は爪で爺さんの腹を裂き五臓六腑を食べつくしてしまった。

         聊斉 * 子                                          1994・5・4

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