張三と閻魔

昔、張三という役者がはやり病でポックリ死んだ。するとすぐ鬼が来て張三を閻魔殿へ連れて行った。前に座っているのは閻魔大王である、張三は丁寧にお辞儀をしてから「閻魔大王さま、張三と申す役者でございます」と挨拶した。「おお、役者か。ちょうど退屈していたところだ、歌を二曲ほど聴かせろ、うまく歌えば悪いようにはせぬぞ」と閻魔大王、張三これを聞いて地獄に落とされまいと、力一杯に歌った。張三が歌い終わると機嫌のよくなった閻魔大王は「見事、見事、よし、歌いぷりがいいからお前を生き返らせてやろう、どんな処に生まれ変わりたいか」と聞いた。 張三は歌で閻魔大王を喜ばせ、それで好きな処に生まれ変われるのかと大喜び、慌ててまたお辞儀をして「有り難うございます、私が生まれ変わりたい処と申しますと、まず屋敷は広々と山や川に囲まれ、父は政府の高官、私は生まれた時から神童と呼ばれ、若くして官吏の上級試験に合格し、西施とどちらかというような美人の妻を娶り、仙人のように長生きできる処でございます」 広い土地もなければ、父が誰であるかも知らず、ましてや美人妻など考えたこともない閻魔大王、これを聞いて羨ましくなり「うーん、お前の言うことは本当にうまい話だ、そんないい処があるなら、わしが行きたい」           (譚振山故事選から)   中国古典笑府巻一(岩波文庫笑府上)に〈清福〉という話があるが、譚振山故事選〈閻王爺也願去〉はその庶民版というべきか。〈張三と閻魔〉はわたしの語る小咄である。                                寺内重夫・00・4・1作成

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