諸葛亮と孔明
張三と李四はいつも暇さえあれば一緒に南だ、北だと、あれこれおしゃべりした。
ある日、二人は諸葛亮について言い争った。張三は「諸葛亮は姓は諸、名は葛亮、孔明は姓は孔で孔明と呼び、二人とも劉備の家来で軍師だ」と言った。
李四は「諸葛亮は諸葛と二字の姓で字は孔明、一人だ、二人じゃあない」と反論した。
二人は顔を真っ赤にして争い、お前が違う、俺が正しい。いや俺がお前がと互いにゆずらない。二人はああだ、こうだと言い争って、学のある董二爺さんにどちらが正しいか決めて貰うことし、負けた方が10銭だして、油揚げ餅を買うことにした。
董二爺さんは目を閉じて二人の話を聞きおわると、からかうように張三を見てから李四をちらりと見て「張三の言うとうり諸葛孔明は二人だ、間違いない。李四は早く金をだしてやれ」と言った。
李四は董爺さんの裁きに不満で論争しようとしたが、董爺さんをじっと見つめながら、不承不承、10銭だして張三に渡した。
張三が得意気にひきあげて行くと、李四は董二爺さんに「あなたはもう半生も学問をして“三国誌”も読んでいるし、十分な教養もおありになるのに、どうして諸葛孔明が一人だということも知らないのですか」と聞いた。
董二爺さんはあご髭をなでながら、悠然と笑い「牛に琴を弾いて聞かせてもしょうがない、お前さん今日はいいものを拾ったよ」と言った。「エッ、何ですか」 「10銭使っただけで張三が愚か者だとわかったじゃあないか」
と言ったとさ。
薛天智故事選 1994・3・11