食いしん坊なほら吹き
800年も前の昔、あるところにたいそうな食いしん坊がいました。とても貧乏で夫婦が一つの服を替わりばんこに着ていました。
家のなかの鼠さえ、お腹が空いてみんな逃げ出す始末です。男はこんな貧乏なのにどんなに腹ぺこでも、自分は金持ちで、毎日うまい酒や肉をたらふく食べていると言っていました。そんなわけで人々はこの食いしん坊を“貧乏ほら吹き”と呼んでいました。
この貧乏ほら吹きが住んでいる村に頑固で融通がきかない“ほんね”と呼ばれている男がいました。ほんねは貧乏ほら吹きは人を不愉快にさせる奴だから、いつか折りを見つけて、この大ぼら吹きで面の皮の厚い恥じ知らずの“馬鹿野郎”にしっかり恥じをかかせてやろうと狙っていました。
ある日、ほんねは貧乏ほら吹きがもう何日も糠饅頭ばかりを食べているのを確かめてから、酒と料理を用意して、貧乏ほら吹きの家に行き、門の前で大声で呼びました。
「旦那、いますか」 「誰ですか」 「ほんねです」 「なにか用事ですか」 「家で酒と料理を用意しましたから来てください」
貧乏ほら吹きは糠饅頭を食べすぎて苦しいのに酒と料理と聞くとよだれがでてきて、そしらぬ顔で「もう食べるだけ食べ、飲めるだけ飲んでしまいましたが、そんなにおっしゃるなら仰せに従いましょう」と言いました。
貧乏ほら吹きがほんねの家に来てお膳を見るや、喉から手が出て来るほど食べたくなり、お膳の上の鶏、鴨、魚、肉みんな自分の腹に入れようと、箸をのばそうとすると、ほんねはそれをとめて言いました。
「ちょっと、待ってください」 「なんですか」 「わたしはなんでも、本当のことを知りたいのですが、あなたは今朝なにを食べたんですか」
貧乏ほら吹きは無理にゲップをだしながら、お腹を叩き「実を言いますと今朝は豚肉の煮付けを大きな丼に3杯食べまして、腹が一杯なのです」と言いました。
ほんねは笑って「それなら、料理を食べないで、お酒を飲んでください」と言いますと、貧乏ほら吹きは大きなことを言ってしまったので、引っ込みがつかず、仕方なく鳥料理をチラリと見ては唾をだして酒を飲み、魚料理を見回しては唾をだして酒を飲み、飲んで飲んで酔っぱらってしまい、ゲエ−と糠ばかりのゲロを大きく吐き出しました。
それを見たほんねは「あなた今朝は腹一杯豚肉の煮付けを食べたと言うのに、吐きだしたのは糠ばかり、どうしてです」と問い詰めました。すると貧乏ほら吹きは目をとがらせて「エ−、あんたも馬鹿だねェ、豚は糠を食べて大きく育つんじゃあないか」と言いましたとさ。
薛天智故事選 1994・3・5