公冶長のこと

 公冶長という人は百の鳥の言葉がわかったという。
 ある日、烏が山の上で「カア、カア」鳴いているので公冶長は何事であろうかと聞いてみると、南の山の上に大きな羊の死体があるのだが、冬なので固くなって、烏には噛み切れない、そこで烏は公冶長に頼んで、その羊を取らせ、自分は、はらわたを貰おうと考え「公冶長、公冶長、南の山に死んだ羊がある、お前は肉を取って、俺にはらわたをくれ」と告げていたのである。

 公冶長はそれを聞き、人を連れて山へ行ってみると、本当に大きな羊が死んでいる、公冶長たちは死んだ羊を割いて、肉やはらわたを取り出し、みんな食べてしまい、烏には何も残しておかなかった。
 烏は公冶長の奴ずるい、俺があんなに肉はお前、俺たちにははらわたとよく言っておいたのに、公冶長は俺たちに何もよこさなかったと、烏は何時かあいつをいじめてやれと考えていた。
 ある日、烏はまた「公冶長、公冶長、東の街道に死んだ羊がある、お前は肉を食え、俺ははらわたを食べる」と叫んだ。
 実はそれは死んだ羊ではなく、頭を切られた人の死体で役人が調べていたのである。

 そうとは知らず公冶長は烏の言葉を聞いて、よしまた取ってやろうと東の街道へ「そのままにしておいてくれ、俺が殺したんだ」と叫びながら走って行った。ところがびっくり仰天、役人は犯人を捜していたので、公冶長が「俺が殺したんだ」と叫んでいるのを聞くと、たちまち、公冶長の首に縄をかけ腕を背中にまわして縛り上げてしまったのだ。
 州の知事が「お前はどうして人を殺したのだ」と糾すと公冶長は「わたしはやっていません」と答えた、「やってない?お前は走りながら、『俺が殺したのだ』と言ったというではないか、いったいどういうわけだ」 「わたしは百の鳥の言葉がわかります、烏や燕がなんと言っているのか、みんなわかるのです」と言って、いままでのことをみんな話した。だが、知事はそんなことは信ぜず「なに!でたらめを言うな、人を殺したのはお前だろう」と言った。

 ちょうどこの時、庭に雀が飛んで来て「チュ、チュチュ、チュ、チュチュ」と鳴いて、またパアッと飛んで行った。それを見た知事が「お前は百の鳥の言葉がわかるなら、あの雀たちは今なんと言ったのだ」と聞くと、公冶長は「雀たちは『みんな、みんな、西の方でに粟を積んだ車がひっくり返っているから、みんなで粟を食べに行こう』と言っていました」と答えた。知事はこれを聞いて役人を見にやらせると、確かにそのとおりであった。

 またしばらくすると、役所の門に燕が集まって鳴いた。知事はまた「燕はなんと言っているのだ」聞いた、公冶長が「燕は『知事さん知事さん、どうしてあなたの息子はなんの罪もないわたしの子を机の抽き出しの中に閉じこめるのですか』と言っています、お聞きなさい、燕はまだ言っていますよ」と答えると知事は息子を呼んで、そうかどうかを聞くと、息子はそうだと言うので、抽き出しを開け燕の子を放すと子燕は「チィチィ」と鳴いて燕たちの方に飛んで行った。  知事は公冶長が本当に百の鳥の言葉がわかると知って、公冶長を釈放した。  

 付記   
  撫順県の別の<公冶長>の昔話では、公冶長は捕らえられて牢に入れられるが牢の軒で烏が「公冶長、公冶長、斉の軍隊がわが国の国境を侵略している。まごまごしていないで水上と山岳の守りにあたれ」と叫んでいるのを聞き、獄卒に斉国が出兵してわが国を侵犯していると伝える、獄卒がこれを国王に報じたので直ぐ兵を出して敵を迎え討ち勝利した。これで公冶長は無罪となり釈放される。
 この外、清原県、露天区、望花区にも<公冶長>の昔話がある。違うところは県の役人が粟を塩水につけて雀に食べさせると、公冶長は雀が「塩からくておいしい」または「熟れてないの、熟れてるの、塩っぱいの、塩っぱくないのがある」と話していると言うので役人はやっと公冶長が本当に鳥の言葉がわかることを知る。  

        撫順市巻上                                          1994・2・16                                        

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