肝比べ

 二人の乱暴者がいました。一人は張大胆、もう一人は李大胆と呼ばれ、村でちょっとは名が知られ、冠婚葬祭や表に出せない裏の出来事があれば村人は二人にその始末を頼みにいきました。乱暴者だったからです。 

 ある日、二人は酒を酌みかわし「お前は駄目だ」 「お前だって駄目だ」と互いに自分の度胸のよさを自慢しました。
 張大胆は「よし、それじゃあ賭けだ、どうだい。村はずれの高家の娘が死んだばかりだから、お前は夜中に娘の墓に行って棺桶の蓋を開け、娘の口に餃子を食べさせられるか、できれば俺の負けだ」と言いました。李大胆はそれを聞くと 「よし、そうしよう」と言い、二人の相談はまとまりました。

 張大胆は李大胆がきっとやるなと思い、“う−ん、これはまずいな、あいつが本当に行けば、俺の負けだ、よし、俺が先に行って棺桶の中に入っていて驚かしてやろう”と考え、張大胆は先に出かけました。
 李大胆は餃子をいれた椀を持ち、ゆっくりと、頭をふりふり墓につき「ふん、たいしたことじゃない」と棺桶をわしずかみにして蓋を開けました。張大胆が娘の死体の上に寝ているとは知らず、李大胆は張大胆の顔を撫で“カシャ”と口をこじあけ餃子を力づくでねじこんで、額をポンと叩き「食べろ」と言って帰ろうとすると、死体が“パクパク”と餃子を噛みました。実は張大胆が餃子を食べたのです、張大胆は食べてしまうと喉の穴をつまみ死体の声のようにして「とても美味しい、もう一つ頂戴」と言いました。

 李大胆は驚いて飛び上がりました、娘が喋ったのでびっくりして全身に冷汗をかき、大急ぎで逃げ出しました。家に帰ってもまだ胸がドキドキしていました。しばらくして張大胆が知らんふりしてやって来ました、「李大胆、行ってきたか」 「行った、娘に餃子を食べさせたら、もう一つくれと娘が言ったんだ」 「本当に言ったのか」 「そうなんだ」李大胆は張大胆が幽霊の替わりになって言ったとは知らなかったのです。
 張大胆はわざと「そんなの、俺は信じないね、俺たち二人で行って、俺がもう一つ食べさせ、娘が喋ったら俺の負け、もし喋らなかったら俺の勝ちだぞ」と言いますと、李大胆は「よし、行こう」と言い、二人はまた出かけました。  

 李大胆は腹ばいになって見ていました、張大胆は娘の死体の口に一つ餃子ねじこみました、娘は本当に“パクパク”と食べ終わると、頭をゆらして起き上がり「もう一つ頂戴」と本当に言ったのです。驚いた二人はパッと逃げ出し、お椀を落とし、顔を真っ白にして大急ぎで逃げ出しました。
 二人は糠をふるうようにガタガタと体をふるわせ、家の中に入っても話しもできませんでした。人々が「どうしたんだ」と聞くと李大胆は「俺たちは死人の口に餃子を食べさせられるかどうか賭けをしたんだ、一回目に俺が死人の口に餃子をいれると、死体がもう一つと言ったんだ、それで次に二人でいき、張大胆が食べさせると、死体の娘が起き上がったのだ」と言いました。

 人々が「えっ、ほんとうか」と驚くと、張大胆は「実は一回目の時は、俺が死体の上に寝ていて餃子を食べ、もう一つと言って李大胆を驚かしたのだ、李大胆は俺に騙されたとは知らずにいたから、俺がそれを確かめようと二人で行ったら、死体の娘は本当に起き上がったのだ」と言いました。
 二人がまだガタガタふるえている時、外で人が大騒ぎをしています、何事かと、みんなで慌てて外に出てみると、高家の娘が本当に生き返って帰って来たのでした。高家の娘は死ぬと毒気が体にまわりましたが、張大胆が死んだ娘の体の上に乗ったので上から圧され、毒気が体の中から外に出たのです、そして二度目に張大胆と李大胆に餃子を食べさせられ、これで正気づいたのです。

 張大胆と李大胆の肝比べが高家の娘を生き返らせたのです。高家ではこれを聞いて驚き、「二人に五ムーの畑をあげよう、これからは大威張りばかりしないで正業について畑仕事をしたほうがいい」と言いました。
 こうして張大胆と李大胆の肝比べの物語が伝えられようになったのです。  

         撫順市巻下                                          1994・1・7

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