書の先生と大工
ある書の先生と大工が日頃から行ったり来りしてお喋べりをしていた。大工はいつも 「俺は大工だから、分からない木材はない、どんな木材でもみんな分かる」と自慢し、先生は「わしだって分からない字はない、どんな字をだされても分かる」と言っていた。
ある日もこんなお喋りのあとに別れると、先生はあいつはどんな木でも見分けると言うから試してやれと、いろいろ考えながら豆畑で立小便をしていると、豆畑に親指ほども太い刈り残しの豆の茎があったのでそれをひっこ抜いて、家に持ち帰り小刀でこの豆の茎の四方を四角の棒のように削り整えてから、大工に「棟梁、これは何の木かね」と聞いた、大工はそれを持ってどう見ても何の木か分からない。楊柳でもない、楡の木でもない、大工はとても不思議がり「う−ん、この木は本当に珍しい、俺は長く大工をしているが、今までこんな木を見たことがない」と言った。先生は「もうお前大工をやめろ、あんなに自慢したくせに豆の茎さえもわからないのか」と言った。
大工はこれは俺を困らせようとしたのだ、俺を困らせるなら、俺もお前をだましてやると考えた。大工は一匹の糞ころがしを見つけるとそれを捕まえ、墨壺の中にいれてから紙の上に這わせた、糞ころがしが紙の上を曲がりくねって這いおわると、大工はそれを持って先生の所へ行き「今度はあんたを試してやる」 「どれどれ見せてみろ」
大工が先生にその紙を見せると先生は「うん、これは何の字だ、草書、いや草書ではない、篆書、いや篆書でもない、滿字、いや滿字でもない、これは何の字だ。わしは長く書を教えているが、今までにこんな字を見たことがない、わしはこの字は知らない」と言うと大工は「もう教えるのをあきらめて、早く家に帰り子供でも抱いていろ、糞ころがしが這ったあとも分からないでまだ書を教えるのか」と言った。
撫順市巻下 1994・1・3