掏りを捕まえる

 大趙さんは日曜日にデパ−トへ子供の靴を買いに行ったのですが買わずに帰って来ました、それどころか靴を買う筈だったお金も持っていません。
 どうしたのでしょう。大趙さんはお金を掏られたお婆さんに靴のお金を上げてしまったのです。家に帰った大趙さんは奥さんや子供たちから褒められましたが、心の中ではまだ癪にさわっていました。大きな体なのに、ぼんやりしていて、けちな掏りすら捕まえられず、お婆さんをいくらかのお金で助けたことと、掏りを見逃したことは同じにならないのです、もしかすると、お婆さんにお金を上げていた時に、掏りはそばに立っていて、喜んでいたかもしれないのです。
 ここまで考えると大趙さんは、ポンとテ−ブルを叩いて立ち上がり、透明なナイロンの半袖シャツに着替え、痛いのを我慢して、2枚のピンピンの新しい10元紙幣を半袖のポケットに縫いつけて、またデパ−トに出かけて行きました。デパ−トへ行くとすぐ大趙さんは何人の人にもチラリと見られました。遠くからでもポケットの10元紙幣が透けて見えていたからです。でも大趙さんは構わずに平気であちこち歩き回り、最後にさっきお婆さんが掏りに遇った衣類売り場に行き、店員に服を持って来て貰い台の上で、何度も何度もひっくり返して見ていました。

 すると胸の所に何かが動きました、横目で見ると、一人の男が2本の指を大趙さんのポケットの中へ伸ばしています。大趙さんは小声で「はさんであるよ」と言うとまた胸の所が動きました、大趙さんはまた「はさんであるよ、そんなことよくないよ」と言い終わるとまた胸の所が動きました、大趙さんはポケットに入った手を握り、怒って「はさんである、はさんであると言うのにまだ掏るのか、どうして言うことを聞かないのか」と言うと、大趙さんはシャツをひろげて見せました、掏りはポカンとしてしまいました。大趙さんはお札を針で自分の肌に縫いつけていたのです。けちな掏りはうなだれて、勇んでいる大趙さんにひきづられて派出所に行きました。周りで見ていたお客はみんな面白がって笑いだしました……

        当代流伝故事選                                      1993・10・17

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