石の縁結び
昔、山の柴を薪にして市で売って暮らす若者がいた。
若者は山に入る度に木の下で大小いろいろな石ころを決まって二つ一緒に並べている老人に出会った。ある日、若者は柴を担いで帰る道でまた老人に出会い、柴を下ろして「お爺さん、毎日ここで石を並べて何をしているのですか」と尋ねた、すると老人は「わしは夫婦の縁を結んでいるのじゃ、見てごらん、この二つがひと組み、その二つもひと組みだ」と答えた。
「毎日毎日そんなに夫婦の縁を結んでいるんですか」「そうだ、こうして毎日縁結びをしても間に合わないのだ」「それならわたしは誰と結ばれているか見せてください」「まだお前さんの番にはなっていない」「そこを何とかひとつ、わたしに少し早く誰と結ばれるのか教えてもらえませんか」すると老人は少し考えてから「よし」と言い、大きな石をとり、それから小さな石をとって 「この大きな石がお前さん、そしてこの小さな石がお前さんの妻だ、まだ揺り籠の中にいる隣の娘だよ」「え、わたしの妻は隣のあの小さな赤ん坊なのですか」「そうだ、何と言おうと揺り籠の中の隣の赤ん坊がお前さんの嫁だ」と老人は言いきった。そんなこと知らなければよかったのに、知ってしまった若者は慌てて“俺は今年十七、なのに妻になる娘はまだ揺り籠の中の隣のあの赤ん坊、爺さんの言うことが本当なら娘が十七八になるまで十何年もある、その時俺はもう三十過ぎだ、それじゃあ、あんまりだ。別な縁結びを頼んでも、爺さんはきっとできないと言うだろうから、あの隣の小さな娘を殺してしまえば、別なもう一つの縁結びをするだろう”と考え、若者は斧を研ぎ、隣の家の門の前をうろつき、人がいなくなったすきに隣の家に入った。
赤ん坊は揺り籠の中で眠っている、若者は斧を振り上げ赤ん坊の頭を切りつけ、赤ん坊が大声で泣くのを聞いては逃げた。赤ん坊の母親は畑で、いんげん豆を摘んでいたが娘の泣き声を聞きつけ急いで戻ると、娘は頭から血を流している、母親は慌てて娘の頭の傷に薬を塗り手当てをした、幸に切りつけられた時、揺り籠が揺れ急所をはずれ、傷は残ったが娘は死ななかった。 若者は罪を恐れ東北の地に逃げのび、十何年が過ぎ若者は三十歳を過ぎた一人前の男となり、金を持って再び故郷へ帰って来た。男は若い時の罪が知られていないことを知り、娘は傷跡が残ったものの無事であることも知って胸をなでおろした。
さて、娘は頭に傷があり、よい嫁入り先がみつからないでいた。そこへ昔、村にいた若者が金を持って帰って来た。村人はこの男がもとは村の若者だったし、真面目でもあるからと、娘の親にこの男との結婚を勧めた、娘の親は良家へ嫁ぐことを望んでもいないし、少し年が違いすぎるがそれはそれだと娘を男に嫁がせることにした。男はあの娘だとは知らない。結婚式の翌日、娘が髪をすいていると男は娘の頭の傷を見て「頭の大きな傷はどうしたのか」と聞いた、娘は小さい時、揺り籠の中で誰かに傷つけられたと話した。男は犯した自分の罪の深さに驚き悩み、この娘こそ自分の生涯の妻だと心のうちに叫んだ。
これは中国民間文学集遼寧巻李占春故事選〈石頭配婚〉の私の語りである。日本の昔話には産神問答〈夫婦の因縁〉−吹谷松兵衛昔話集.・野村純一編-がある。