お前は俺の家の物を壊した
昔、ある処に貧しいながらなんとか暮らしている夫婦がいた。亭主は何時も金持ちになることばかり考えていたがそうはうまくいかない。
ある日、雌鶏が大きな卵を産んだ、女房がそれを亭主に見せると、亭主は喜んで「この卵は食べずにとって置こう」と言った、女房が「どうして食べないの?」と聞くと、亭主は「この大きな卵を雌鶏に抱かせてひょこにする、卵は大きいからきっと丈夫に育つ、これがうまい具合いに雌のひよこで、大きくなって卵を産む、この卵をまた抱かせてひよこにする、ひよこが大きくなって卵を産む、卵を抱かせてひよこにする。
こうして鶏が増えて卵が増える、増えた卵を売って金にする、この金で子山羊を買う、山羊が沢山産まれる、この山羊をやりくりして牛を買う、牛が子牛を産んで三年たつと五頭になり牛が増える。こうなりゃあ馬を買って家を建てる、こうして俺たちの暮らしはよくなるてえわけさ、だからこの卵だって馬鹿にはできねえ」
女房は亭主の話を聞くと可笑しいの我慢して「うまく家を建てて、それでもお金があまったらどうするのよ」と言うと、亭主はもっと張り切って「そうなりゃあ俺たちは旨い物を食い、旨い酒を飲み、いい物を着て思いのままだ、俺も羽振りがよくなって、一軒持てるというもんだ」と言った。
女房はこれを聞くと亭主は妾が欲しいのだ分かり、カッとなって怒りだした。夫婦はアア言えばコウ言うで互いに怒鳴るやら叩くやら、とうとう卵を落として割ってしまった。亭主は割れた卵を見ると目を剥き、女房をひっつかまえ「お前は俺の家の物を壊した、これじゃあ一緒に暮らしていけない、離婚だ、おしまいだ」と言って騒いだ。
たった一つの卵でこんな騒ぎになるなんて可笑しな話だ。
李占春故事選 1992・10・13 2001・05・30校正