焼き餅を食べる(一)
ある処に父親にたいそう可愛がれていた息子がいた。息子が星や月を欲しがれば取ってやろうと言うくらい可愛がられていた。食べたい物は何でも買って貰った。
やがてこの息子は大人になり、妻を迎え子も生まれ幸せな日々を送るようになった。それにつれて父親は年を取って老い、何もかもみんな息子に頼って暮らさなければならなかった。
ある日、年老いた父親は少し焼き餅が食べたかったので息子に買って来てくれと頼んだ、父親が家の外で待っていると息子は焼き餅を買って帰って来た。ところが息子は父親を見もせずさっさと家の中に入ってしまった。父親は家の中で食べさせるつもりだろうと続いて家に入ろうとすると、息子は音をたてて戸を閉めてしまった。
父親は何気なくどういうつもりだと戸の隙間から覗くと、息子は自分の子をあやしながら焼き餅を食べさせている。父親はそれを見ると思わず涙して呟いた。
戸の隙間から家の中を覗けば
息子は優しく孫に焼き餅を食べさせていた
息子は自分の子を可愛がっていた
ああ息子は昔のわしを真似ている
李占春故事選 1992・10・13 2001・05・30校正