貧乏神(二)

 大晦日の晩、福の神は得意満面で下界の灯を指差しながら貧乏神に「貧乏神、見てみろ!下界の家ではみんなわたしを待っているんだ。だからこうしてもいられない、行くぞ、お先に失礼!」と言った。福の神に馬鹿にされた貧乏神は天上から下界を見ていると何処の家も福の神を祭り、福の神はあっちの家、こっちの家とつぎつぎに忙しそうだ。 
 ところが、ある一軒の百姓家を福の神は通り過ぎてしまった、アレ!どういうわけだと貧乏神は目を疑いブラブラ下界へ下りて行った。

 実はその家の夫婦は毎年福の神を迎えていたのだが、何時までも貧乏でさっぱり変わらないから福の神を祭らず貧乏神を祭っていたのだ。貧乏神がこの家を覗くと自分を祭っているので嬉しくなり、“俺を祭ってくれるこの家をこの上また貧乏にするわけにはいかない”とこの家に入って供え物を受けた。

 年越しが終わって貧乏神は天界へ帰ると、福の神に「今年はわしを祭って待っていた家があった、だからわしもその家を大事にしてやり、この上またあの家を貧乏にさせたくない」と言った。それを聞くと福の神は顔色を変え「お前は貧乏神だから人を貧乏にするのが役目だ、人を金持ちにしてそれで貧乏神と言えるのか」と罵ったが貧乏神は何も言わず、そっと白髪の老人に姿を変え自分を祭ってくれた百姓家へ行って「お前さん、あんたは河べりに畑を持っているだろう、今年はその畑に胡麻だけを蒔きなさい、わしが豊作にしてやるから」と言った。

 この百姓は老人の非常に誠意のある態度を見て、河べりの畑は秋の水害に遭いやすいと思ったが、経験豊かな年寄りの話は聞くべきだと思い、言われた通りに河べりの畑に胡麻を蒔いた。すると本当に胡麻はほかの作物よりもよく育った。
 福の神はこれを知ると怒り、竜王に「貧乏神を祭る貧乏人なんて聞いたことがない、こんな貧乏人を金持ちにするのは間違っている、竜王はどう思うかね」と言うと竜王も「貧乏神は人を貧乏にするのが仕事だ」と貧乏神をやっつけることに賛成した、そして胡麻が熟したら大水にして胡麻を水浸しにしてやろうと相談した。

 さて、福の神と竜王が話し合っているのを聞いた貧乏神はまた白髪の老人になってこの百姓家へ行き「お前さん胡麻を刈り取れ」と教えた、百姓は貧乏神とは知らず「お爺さんが胡麻を蒔けと言うから蒔きましたが、あと何日か待てば熟して余計に取れるのにもう取り入れるのですか」と言うと貧乏神は「なんでもいいから取り入れろ、実を中に根を外にして積み上げれば実は熟して増えるから心配するな」と言った、百姓は腑に落ちなかったが老人が「今、刈り取らないと何も取れないぞ」と言うので、仕方なく女房と一緒に毎晩暗くなるまで胡麻を刈り取り庭に積み上げた。

 その時、竜王が大水を出した。だが、貧乏神がこっそり胡麻を積み上げた庭を大きな丸を描いて土手で囲んでおいたので、丸い土手の外は水が一杯になり土手と水平になったが水は庭には入らなかった。竜王がこの位でいいだろうと水を引き、福の神が手をかざして貧乏神は口惜しがっているだろうと下界を見ると、雲の上にも何処にも貧乏神の姿は見えず、ただ水浸しにならなかった胡麻の山と、貧乏神を祭った百姓家が水浸しになっているのが見えるだけだった。   

    李占春故事選                                   1992・10・07   2001・5・28校正

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