尻の穴を塞ぐ
何時も小作人のアラを探しては“ああだ、こうだ”とブツブツ、文句をつけるのが好きな嫌われ者の地主がいた。 ある春の種蒔きの日、地主は腹いっぱい食べたり飲んだりしていい気持ちになって畑に来ると、ロバに犂を曳かせる小作人を見て、耕し方の良い悪いに文句をつけてやろうとした。
丁度その時、ロバが「グウグウ」言ったので、小作人は目を角にして肩から腕を振り、ロバの尻を“ビシッ、ビシッ”と鞭で叩き、「俺がお前に草を食べさせてやっているのに、やたらに文句ばかり言いやがって、今日はまた文句をつける気か」と怒鳴った。
地主は腹の中で“ハハア、こりゃあ桑をさして槐を罵るテェやつで、こいつ俺様をからかっていやがるな”と、カアーとなったが、この時、小作人が腰をかがめ土の塊を拾い、乱暴にロバのしっぽをはねあげてロバの尻の穴を塞いだので、思わず「プッ」と噴き出して笑い、小作人に「お前、何してるんだ」と聞いた、すると小作人はすました顔で、丁寧に「旦那さん、このロバは変な癖があって鞭で叩くと臭い屁をするんで、あっしはこいつの尻の穴を塞いだんでサァ」と言った。
地主は自分が罵られているのが分かっていたが、正面きって文句も言えず厚い面の皮を茄子のようにふくらましたとさ。
薛天智故事選 1992・8・25 2001・4・18校正