俺たちの財産
昔、ある村に李さんという夫婦が住んでいました。毎日山で薪を取って暮らしていましたがとても貧乏でした。
ある日、李さんのおかみさんは山菜を取ってきて腹の足にしようと小さな籠を抱えて朝早く出かけました。
李さんのおかみさんは山菜が沢山ありそうな所を探しながら歩いて行き、山の麓によく育った青々とした山菜を見つけました、しゃがんで、小さなシャベルをだし山菜を掘っていくと、突然、シャベルが何か硬い物にぶつかって、“カチン”と音がしました、おかみさんは土の中に何かあると、一生懸命掘ってみました。
すると土の中から真っ黒なピカピカ光った大きな壺がでてきました。おかみさんは何が入っているのかと壺の蓋をこじあけて見て、びっくりしました。壺の中には銀の粒が一杯つまっていたのです。おかみさんは本当に嬉しくなって、両手で大きな壺を抱え、土の中からだそうと、必死に力をだしましたが、壺はビクとも動きません。
李さんのおかみさんは自分の力ではとてもこの壺はだせないし、朝からこんな大きな壺を抱えて、村に帰れば人に見られてしまう、夜になってうちの人と一緒にきて持って行ったほうがいいと考え、蓋をして、それからまた壺の上に新しい土をかぶせて埋めました。おかみさんはあとで探せなくなるといけないと、土の上に二本の柳の枝を印しに挿しておきました、それからおかみさんは小さな籠を抱えて家に帰りました。
李さんのおかみさんは家に帰ってからも嬉しくって、まだいい気持ちでグウグウ寝ている李さんを起こして、「ネエ、早く起きなさいよ、いいことがあるんだから、うちは大金持ちになるわ。さっきあたしが山菜取りに行って、何を掘り出したかあんた当ててごらんなさいよ」と言いました。李さんは寝たまま「何を掘ったって、掘ったのは土だろう」と言いました。 「ウ−ン、何言ってるのよ、あたしが掘りだしたのはね、大きな壺で、中はみんな銀の粒なのよ、あんたならどうする、わたしはね、明るいうちに壺を抱えて帰れば人目につくと思って、また壺を土の中に埋めて、すぐわかるように、その上に柳の枝を印しに挿してきたのよ、暗くなってから、二人で行って壺を取ってきましょうよ」「どうもこうもない、俺は行かないよ」「これは本当よ、あんたをからかっているんじゃないわ、あたしたちは本当にお金持ちなのよ」「本当でも俺は行かないよ、他人の財産なんて俺はいらない。俺の財産ならひとりでに向うから来る、向うからひとりでに来ないのなら、それは俺の財産じゃない、寝ていたほうがいい」「ヘ−、世の中であんたくらい馬鹿な男を見たことないわ、今ある銀の粒を面倒くさがって取りに行かないのなら、いったい何をするって言うの。あんたが行かないなら、明日実家へ帰ってあたしの兄弟と取りに行くからね。取ってきたってお前さんには一つもやらないよ」おかみさんはそう言うと怒りながらご飯の支度をはじめました。
さて、壁に耳あり。さっきの李さん夫婦の話を隣の黄さんが聞きました。黄さんはここらで有名な欲張りです、李さん夫婦の話を聞くと、慌てて、この話を全部女房に話しました「あいつがいらないなら俺がほしい、この俺が今晩先にそこへ行って、銀の粒を取って来る」と言いました。黄さん夫婦は待ちに待った夜がやっとくると一緒に家を出て、山の麓に向かいました、あちこち探し回って、とうとう柳の枝を挿してあるあの場所を見つけました。黄さんは喜んで女房と一生懸命にそこを掘りました、しばらく掘りますと、黒く光る壺が出てきました、二人は力をだして壺をひきだしました、黄さんはギュウと壺を抱きしめ、喜びにふるえながら女房と家に帰りました。 黄さんは部屋に入ると、外からのぞかれないように急いで女房に窓にしっかりと布を当てさせました、こうして壺を床の上において、黄さんは得意満面になって壺の蓋を開けました。とたんにびっくりして跳び上がりました、壺の中にはどんな銀が入っていたのでしょうか。ふくれてパンパンになったガマ蛙がウヨウヨ入っていたのです、黄さんは目がかすんだのかと思って、目をゴシゴシこすって、ジ−と壺の中を見つめました、ア−、やっぱりガマ蛙です。 黄さんは口惜しがりながら、飛び出したガマ蛙をどうやらこうやら、やっと壺に戻しました。黄さんは怒って壺をにらみつけ、目玉をギョロッとさせてハッと気がつきました。いつも俺と李の家とは喧嘩しているから、あの夫婦は俺をワナにかけ、からかったのだ。ヨ−シ、こうしてやる、俺もお前たちを懲らしめてやる。こう考えると黄さんは壺を下において女房にヒソヒソ囁きました……。
夜更けて、黄さんはぐっすり寝込んでしまい、女房に突き起こされると、着物を着て、寝ぼけまなこをこすりこすり布団からでると、下においた壺を抱いて隣の李さんの家に行き、そっと障子に大きな穴を開け、あの壺を“ゴトッ”と部屋の中に投げ込みました。 李さん夫婦はすっかり寝入っていましたが、足もとで“ゴトッ”と音がしましたので、びっくりして目を覚ましました。おかみさんは驚いて布団の中にもぐり込みましたが、李さんは勇気をだして灯りをつけました、灯りをたよりに床の上を見ると、オ−、床の上はみんなピカピカに白く輝く銀の粒です。驚いて布団を被っているおかみさんをつっ突いて「オイ、怖がらなくてもいい、見てみろ、銀の粒だ。何処からこんな沢山来たんだろう」」と言いました。おかみさんは布団から顔をだして思わずびっくりしました。しばらくしてやっと「アレ、これは不思議だ、この大きな黒い壺はあたしが朝掘り出したあの壺だ、どうして自分の足で、あたしたちの家に来たんだろう」李さんは慌てず、どうだいという態度で「みろ、俺の言った通りだろう、俺たちの財産なら自分でくる、俺たちの財産でなければ向うから来やしない。これは俺たちの財産だ。もしそうでなければ自分で歩いて来るわけがない」と言いました。
これは中国民間文学集成遼寧巻譚振山故事選の〈是我的財自己来〉を読んでの私の語りであるが、日本の昔話〈天福地福〉と同じである。日本昔話集成本格昔話1、〈天福地福〉の項467頁に〈早起貧乏寝福人〉の話がある。 「早起き貧乏、朝寝福」もまた一つの人生観であろうか。