二匹の蚊
町に住む蚊と村に住む蚊がいた。
ある日、この二匹の蚊が出会った、「兄貴は長く町にいるから町がいいだろうが村にもなかなかいい所があるよ。なにしろ村の人間は蚊を防ごうなんて考えていやせんから、あっしは毎日たらふく生き血を吸って満足してますよ」「それが本当なら俺も連れてって貰って腹ごしらえしたいもんだ」
そこで二匹の蚊はブーンと村へ飛んで行った。
村人は夏は夜もみんな窓を開け、畑仕事で疲れ、蚊が飛んで来たってかまわずにぐっすり寝ている。それに村人の肉はしっかりしていて血も多い、二匹の蚊は僅かの間に腹一杯になり腰まで丸くつっぱるほどになった。村の蚊は町の蚊の腹のつっぱり具合いを見て得意になって「どうだい、今晩は町より腹一杯になっただろう」と言うと町の蚊は「村人の血は旨いことは旨いが少し土臭いな」とけちをつけた。
何日かして二匹の蚊はまた出会った。町の蚊は村の蚊に礼を言って村の蚊を町へ案内した。二匹の蚊は町の中をあちこち飛び回っているうちに夜になり腹も空いてきたので食べる所を探したが町と村とはだいぶ違っていた。町人も暑いので窓を開けて寝ているのだが何処の家もみんな窓に網を張っているから家の中に入れないのだ。二匹の蚊はすぐ夜中になるのにまだ食べ物にありつけない、村の蚊は腹が空きすぎてイライラしている。そこで町の蚊は村の蚊を大きな寺院へ連れて行った。
寺院には網が張ってないので二匹の蚊は一息で中に入った、すると丸々と太った人がいるので、村の蚊はすぐその人の頭に飛びついて猛烈に血を吸い出した。しばらくして町の蚊は「どうだい、太っていて吸いがいがあるだろう?」と言うと、村の蚊は返事もせずまだ食らいついている。町の蚊がまた「どうだい、村とそんなに違わないだろう」と言うと、村の蚊は町の蚊を睨んで「何言っているんだ、町の人間はいくら食いついても血を出さないじゃないか、それに人間の匂いもしない、お前について来て俺はすっかり損してしまった」と言ったとさ。
李占春故事選 01・3・21校正