蛙の息子 

  昔、ある村に子どものない貧しい老夫婦が住んでいた。老夫婦は貧乏を苦にはしなかったが、もっと歳をとってから自分たちを世話してくれる身内がいないのを嘆き、子どもが欲しかった。
 ある日、老夫婦は「蛙の大きさの子どもでもいいから授けてください」といろいろな神様にお願いした。すると本当に老夫婦は子宝に恵まれた。ところが、月満ちて生まれた子は背中に三つ黄色い筋がある太鼓のような目をした蛙であった。

 爺さんは婆さんに「どうして蛙を生んだんだ、捨てるわけにもいかないし、近所の笑い者になってしまう」と悔やんだ。婆さんは爺さんの言い分に不満であったが、すぐ「何も言わないでおくれ、ともかくあたしの生んだ子なんだからね。笑う者には笑わしておけばいいいのさ、家を絶やすわけにはいかないんだから」と言った。
 こうして心の優しい老夫婦は蛙を二人の息子として育てることにした。やがて近所の人たちも婆さんが蛙の子を生んだことを知った。

  月日が経って、蛙の息子は箕ぐらいの大きさに育った。ある日、婆さんは蛙の息子をいたわりながら「もしお前が一人前の若者だったら、もう仲人になってくれる人がいるのにねぇ」と嘆くと蛙の息子は「おっかさん、心配しなくていいよ、あと三日すると俺のお嫁さんを世話してくれる人が来るよ」と人の言葉で話した。
 婆さんは驚いたり喜んだりして「お爺さん早くおいで、息子が人の言葉を話したよ」と大声で呼んだ。爺さんが慌てて走って来ると、蛙の息子はまた「おとっつあん、もう三日すると仲人が来て俺のお嫁さんが来るよ、そうすればおっかさんもおとっつあんもお嫁さんにいろいろ手伝って貰えるようになるよ」と話した。

 爺さんは喜びはしたが心配で「人の足に踏みつけられるような蛙のお前に何処の娘さんがお嫁になりますと言うのかね」と悲しげに言った、すると蛙の息子は自信ありげに「おとっつあん、おっかさん、まあ待っていて下さい」と言った。
  三日目に本当に蛙の息子に嫁さんを世話すると言う人が来た。娘と蛙の息子の仲人を頼んだのは村の王であった。王は前からこの老夫婦とつきあいがあって、いろいろ貸し借りしていたのだが、王の家は子沢山でおまけに王は長年の病気、その治療に老夫婦から金を借りていたが日を追ってそれがかさみ、返すにも返せなくなっていたのだ。王は老夫婦に済まないと思い、考えに考え三番目の娘を借金のかた代わりに思い切って蛙の息子に嫁にやることにしたのだった。こんなわけで王は人を頼んで娘と蛙の息子との結婚を申し入れて来たのであった。 

  老夫婦は「でも、うちの息子は蛙ですよ、娘さんは分かっているのですか」と聞くと仲人は「王家ではそう願っているのです、心配することはありませんよ」と言うので老夫婦も大喜び、結婚式を挙げて娘は蛙の息子の嫁になった。娘は優しい嫁になり何時も老母についてよく働き、諺の通り“鶏に嫁げば鶏に従い、犬に嫁げば犬に従う”としだいに蛙の息子の妻になりきっていった。

  ある日、隣り村に芝居がかかり老母は喜んで蛙の息子の嫁を連れて見に行った。蛙の夫は老母と妻が出かけると、凛々しい若者に変わってその芝居小屋に行き、老母と妻のそばに座った。老母はこの若者を見て「うちの蛙の息子がもしこんな器量のいい若者だったらよかったのになあ」と言い、妻は「こんな人のお嫁さんになれるのはどんな娘さんかしら」などと小声で話し合っていた。蛙の息子はそばにいながら何も言わず聞こえない振りをしていた。芝居が終わると若者になった蛙の息子はいなくなった。

 二日目の晩も蛙の息子は若者になって老母と妻のそばに座って芝居を見ていた。こうして蛙の息子は三日続いた芝居を凛々しい若者の姿になって見ていた。 さて、蛙の息子の妻は三日目の芝居が終わらないうちに老母に「あたしは疲れたから先に帰ります」と言うと、老母はちょうど面白いところだったので「それなら先に帰ってもいいよ」答えた。

 蛙の息子の妻が芝居小屋から急いで帰ると蛙の息子が何処を探してもいない、そしてやっと薪のそばに蛙の皮があるのを見つけた、よく見るとそれは夫の蛙の皮と同じ模様であった。その時、庭に人が入って来たので見ると芝居をそばで見ていたあの凛々しい若者であった、そこで蛙の息子の妻はその若者が自分の夫であることに気づき、夫がもう蛙には戻れないように急いでその蛙の皮に火をつけて燃やしてしまい「あなたは人に変われるのにどうして蛙になっているの」と言うと夫は「私はまだ人になれる時がきてなかったのだ」と言った。

 そこへ老母が芝居から帰って来て部屋にいる若者をじっと見て、芝居を見ていたあの若者だったので不思議がると蛙の息子の妻は「この人がお母さんの本当の息子です」と教えた。老母はそれを聞いて喜び「アア、お前もう蛙にならないでおくれ」と言うと蛙の息子も頷き、それから老夫婦と若夫婦は一緒に楽しく暮らした。

 それから何日も経ったある日、夫は妻に「私たちはもう別れなければならない日が来た、お前はこれから年老いた父母によく仕えておくれ」と言っていなくなってしまった。妻は泣きながら大声で「お母さん、早く来て、夫がいなくなった」と呼ぶと老母が飛び出して来て「息子よ、何処にいるの」と叫んだ、「おとっつあん、おっかさん、私はここにいます」老夫婦が声の方を見ると、蛙の息子は雲の上から黄色い錦の布を老母の手に落とした。

 黄色い錦の布には『おとっつあん、おっかさん、妻よ悲しまないで下さい、私は星の精で今日、天界へ帰らなければならないのです、妻は身ごもっています』と書いてあり、読み終わると錦の布はなくなっていた。老母と妻はまた泣いた。 やがて妻は男の子を生んだ。この子は小さい時から利発で十八歳になると都に上り、国の試験を受けて合格すると偉い役人になり、老夫婦とこの母子は幸せに暮らした。

    姜淑珍故事選                      01・3・12校正

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