馬鹿婿と年画

 年の暮れに女房が馬鹿婿に銅銭二十枚を渡し、年画(新年に飾る絵)を買いにやった。

 馬鹿婿は市場へ行くと布を売る男が「山高く道遠くして我遅れる」と言っているので、馬鹿婿は「面白い話だ教えてくれ」と頼むと布売りは「わしは遠くから来て、疲れているんだ、ただじゃ教えられない」と言う、馬鹿婿が「教えてくれれば銅銭二十枚で買う」と言うと、布売りは「山高く道遠くして我遅れる、つまり俺は遠くから来ておそくなったと言うことだ」と言った。

 そこで馬鹿婿は布売りについて「山高く道遠くして我遅れる」と七八回繰り返し、すっかり覚えると銅銭二十枚を布売りに払った。馬鹿婿は「山高く道遠くして我遅れる」と唱えながら家へ帰り「山高く道遠く……」と言って門を開けたとたんにあとを忘れてしまった。

 老母が「画(hua )を買って来たかい」と聞くと馬鹿婿は「山高く道遠く」と答えた。女房はあきれて「それを銅銭二十枚で買ったのかい」と言うと馬鹿婿は「だって、お前はわしに話(hua )を買って来いと言ったじゃないか」と言ったとさ。                 

馬鹿婿の商売  

女房が馬鹿婿に「商売に行っておいで」と金を渡した。

 それで馬鹿婿は生きた川蟹を仕入れたが、荷を両肩に交互に担ぐことを知らず、市場に行くまでにすっかり疲れ、川辺の柳の下でひと休みして寝込んでしまった。目が覚めてみると蟹はみんな川の中へ逃げてしまって一匹もいない、馬鹿婿は空の籠を担いで家へ帰り、女房に聞かれると「みんな逃げてしまった」と答えた。

 女房は「馬鹿だねえ、籠の上にどうして押しをのせておかなかったのさ」と言うと馬鹿婿は「早く言ってくれれば俺だって分かったのに」と言うと、女房は「しょうがない、もう一度実家から金を借りてやるから、卵を仕入れて商売しな、遊ぶんじゃないよ」と言った。

 馬鹿婿は七八十斤の卵を仕入れてまたあの川辺まで来ると眠くなった、蟹の時は籠に押しをのせておかなかったから逃げられたのだ、今度はしっかり押しをのせておこうと大きな石を二つのせておいてひと眠りした。さて目が覚めてみると籠の中の卵は潰れて外にしみだしていた。「今度も元手をなくしてしまった、泣くに泣けない、どうすりゃいいんだ」と石をのせたまま籠を担いで家へ帰った。

 女房が「お前さん、なんで大きな石を二つも担いで来たのさ」と聞くと、馬鹿婿は「お前が石をのせて押しにしろと言ったから、押しにしたんだ」「このうすのろ、蟹の籠に押しをのせろと言ったから卵の籠にも石の押しをのせたのかい、馬鹿だねえ」と言ったとさ。 

     四老人故事集                           1996・10・1    1999・2・13校正

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