日本各地に伝わる言い伝え、民話などを集めてみました。
褌の風土性といったものを感じます。


「養老の滝」伝説
岐阜県穂積町に伝わる民話から

「ふんどし」を洗濯した老婆の話

 むかしむかし,上生津の村に滝坪(たきつぼ)という所がありました。今は付近一帯に住宅が建ち並んでいますが,昔は苗代田が多くあり,雨が少し降ると一帯が水びたしになる所でした。そこには,今もよく知られている「超誓寺(ちょうせいじ)」というお寺がありました。
 そのお寺には,先祖代々大切に管理しているという,一本の柳(やなぎ)の木がありました。さて,この柳の木。老木ではありますが,しなやかに枝をたれ,木の又の所から不思議な水が泉のごとくわき出ていました。とうとうと流れ出る水は,大きな淵(ふち)となって「滝」と言われていました。この滝の水,それはそれはおいしいことこの上ありません。体の中のすみずみまでしみとおるうまい水。毎日飲んだ者は,体の痛みが取れ,元気をもり返すといわれました。そのうわさは,村中だけでなく,となり村まて広がり,都の天皇にまで聞きおよんだとのことです。 村の人々は,その滝の所にたれさがる柳の木で作った「不動明王(ふどうみょうおう)」を二体お祭りし,毎日手を合わせて祈ったそうです。
 ところが,ある日のこと,一人のばあさまが,川へせんたくをしに行く途中,滝を通りかかりました。「のどが渇(かわ)いたわい。ちょっと一休みして,水でも飲もうかいな。」と,滝の近くに腰をおろしました。このばあさま,ちょっとなまけ者。「川まで行くにはまだ遠い。誰も見ていない間に,それー」と,事もあろうに,この浄(きよ)い滝の水て,ふんどしを洗ってしまいました。 それを見ていた不動明王。「この,ふとどき者め,ふんどしを洗うとは何事だ。この地には,もう,滝の水はいらぬわい。」と,水をとめてしまわれました。それからというもの,この柳の木の下に,あれ程とうとうと流れていた水が一滴も出なくなったそうです。
 その後…その不思議な滝の水は,養老の地に移り,ある泉にてこんこんとわき出るようになったとのこと。不動明王の仏も一体,その泉におすわりになって,その後もずっと,泉を見守っておられるそうです。そして,泉を訪れる人は,必ずその不動明王に手を合わせました。今では,その泉の滝が「養老の滝」となって多くの人が訪れています。そして,上生津(かみなまづ)にあった滝も「養老の滝」と言われるようになり,「養老の滝」の話は,ルーツをたどれば,「穂積の養老の滝」にあったということです。この伝説の柳は,近年まて立っていましたが,昭和三十六年第二室戸(むろと)台風で倒れてしまいました。その切り株は,その後も,超誓寺にて大切に保管されています。
 現在,ここは,滝坪公園となり,昭和五十七年七月,滝坪の伝説を記した「郷土の伝承(でんしょう)」碑(ひ)が建てられました。
出典:「穂積の昔ばなし」(穂積町教育委員会編)

    
伝説が残る超誓寺と「郷土の伝承碑」(二枚とも写真は穂積町提供)。
写真右は、「老婆のふんどし洗い」でこの地に移ったといわれる、養老町にある菊水泉。
名所養老の滝に隣接する清水で、穂積の養老の滝伝説にも関係ある名水。全国「名水百選」に選定されている。


富岡町(群馬県)のお葬式と「六尺(陸尺)ふんどし」

 富岡町のお葬式では、近所の葬式の手伝い(陸尺、ろくしゃく?)を頼まれることが多いです。都会に住んでいる人は、お葬式というと、葬儀のほとんどが互助会に任せていて互助会が全部仕切ってしまうので、葬儀を手伝うといっても、受付とお金の勘定くらい。
 富岡町に来て陸尺というのをしないといけないと聞いて驚きました。不思議だったのが、なんで男の手伝いを「陸尺」というのでしょう。「六尺」という書き方もあるから、「六尺ふんどし」と関係あるのかな。それから葬儀のとき、五色の旗を立てるのですが、その旗の意味って何なのでしょうね。町によってや、葬儀の場合によって色や旗の順序がちがうようです。その旗の前後に「てんがい」とか、先龍、後龍というのも立てます。周りの人に聞いても、いわれを誰も知りませんでした。古くからそうしているんだとか。不思議なことばかり。お手伝いといっても、実際にしたことは受付用のテントと、旗を立てたらもう仕事は終わり。
 むかしは、葬儀の祭壇立てたり、土葬なので土を掘ったりしたので、男手がたくさん必要だったのでしょうが、今は火葬だし、葬儀屋さんが大体やってしまうので、午前中で仕事を終わってしまい、あとはひなたぼっこを4時間くらい。。。 女性達が割烹着姿で手ぬぐいを頭にして、精進料理を作っているのをぼーっと眺めているだけです。
 年輩の人たちは、旗を立てる色とか順序とかでもめておりましたが、こういう富岡町の葬儀の風習のいわれや、ルールみたいのをまとめた本があると便利だろうなぁと思いました。葬儀の準備が終わると、豆腐にカツブシと塩をかけただけのを肴に日本酒をふるまわれます。これも不思議。 なんとも不思議なことが多いお葬式です。
(富岡町の言い伝えより)


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