「青衣の怪人」

西条八十「青衣の怪人」


使用テキスト
偕成社 刊 「ジュニア探偵小説・17」
S44/?月

レビュー
 施設で育った少女、千春は、突然現われた黒眼鏡の男に自分の屋敷で働かないかと誘われる。条件もかなりよかったため、彼女は喜び勇んで屋敷に勤めることに決めるが、その屋敷は近所で評判の「化け物屋敷」だった。彼女の屋敷での仕事は、黒眼鏡の男(門倉重秋)の「もうろくした」母の相手をすること。重秋は千春に、「母はもうろくしているので話をまともに聞いてはいけない」と謎めいた忠告をするのであった。そして千春が働き始めた夜から、「化け物屋敷」の名前どおり屋敷の中で奇怪な出来事が相次ぐ。千春の寝室にどこからともなく現われ消失した謎の黒い影、重秋の母(門倉崎代)をおびえさせる謎の音、衆人環境の中、テーブルの上から消失する万年筆、そしてきわめつけの「青がえる男」の出現と廊下からの消失・・・・・・。こうした出来事に耐えきれなくなった千春は、同じく施設で育った親友、友子に相談し、二人は何としてもこの屋敷の秘密を解こうと決心するのであった。そんななか、ある日千春の腕の痣(物心つくまえから彼女の左腕にあった)を見た重秋と崎代はひどく怯えた様子を見せ、彼女の生い立ち等をこまごまと聞くのであった。「この二人には何か人に隠している秘密があるのだ」と直感した千春は、友子と共にさらに秘密を探ろうとするが、今度は彼女たちに危機が迫るのであった・・・・・・。

感想
 歌人として著名だった、西条八十の「少女向け」探偵小説です。彼には、唐沢さんが絶賛した「人食いバラ」という作品があって、こちらもぜひ読んでみたいのですが入手できていません(代作だという説もあるようですが)。この作品、一言でいえば「怪作」ということになるでしょうか。前半はまっとうな探偵小説、中盤は少女達の危機を描くサスペンス、そして後半は・・・・(前半、少女達が屋敷に起こった奇怪事を箇条書きにしてまとめるところなんか、探偵小説そのものです)。特にこの後半が物凄いのですよ。放送禁止用語がばんばん出てきて、読んでるほうが「オイオイ」と思ってしまいます。なんせ、「キチ○イ男」の檻の中に、「可憐な美少女」を閉じ込めてしまうんですから。
 しかし「怪作」ながら、読者を飽きさせないストーリーテリングは見事というほかありません。いろいろな趣向も凝らされていますしね。犯人がなぜ「青がえる男」などと名乗ったのか、その理由が明かにされないのはご愛嬌でしょう(笑)。

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