個室での闘いが始まって・・・

●6/7再手術後4日目
 
次の日面会に行ってみると、やはりふうちゃんは夜よく眠れなかったようでした。夜ぐっすり寝ることも体力をつけるためには大切なので、ママはこの時点で個室に戻ることを決めました。
 ばあばが面会に来てくれたので、一度家に荷物を取りに戻り、その日の夜からママの付き添いがまたスタートしました。

 ふうちゃんは21時頃寝ましたが、1時間弱で起きてしまいました。その後もちょっと寝ては起きる、の繰り返し。電気を消して暗くしているのに、何故・・・?

 原因は、抑制にありました。抑制がとてもきつい為に、ふうちゃんが寝返りを打とうとしても、抑制のひもに引っ張られて起きてしまうのです。
 ママは考えた末、ベッドの柵に包帯で縛られている手足の抑制を解きました。そして、ベッドに仰向けに固定させるために着せられている抑制着のひもも弛めて90度まで身体を横に向けることができるようにしました。
 これらはママが勝手に考えてやったことでした。夜中にも一時間おきに看護婦さんが点滴のチェックに来るので、断っておかなければ結局バレてしまいます。そこでママは腹をくくって、ナースステーションに向かいました。

 ナースステーションでちょっと看護婦さんと話していると、ちょうどそこへ運良くK先生がやってきました。もう24時を回っていたにもかかわらず、です。
 K先生に抑制の目的を聞いたところ、ドレーンと点滴さえ外そうとしなければ良く、足は自由で良い、とのことでした。抑制着を弛めて寝返りが90度まで打てるようにしたことも大丈夫だが、手は無意識にドレーンを引き抜いてしまうこともありうるので、弛めに抑制しておいてほしい、と言われたので、手だけはすごく弛く縛りなおしました。
 このおかげでふうちゃんはその後朝までずっと熟睡することができました。ママも簡易ベッドではありましたが、ふうちゃんの安らかな寝息を聞きながらぐっすり眠りました。

●6/8再手術後5日目
 
翌日の昼間、ママは大きな顔をして手の抑制も解いてしまうことにしました。
ママが基本的にずっと見ているので、大丈夫だと思ったのです。その代わり、責任を持ってふうちゃんがドレーンを抜かないように見ていなければならなくなりましたが、手足が縛られていることがふうちゃんに与える精神的影響を考えると、そのくらい何でもないことのように思えました。もちろん食事を買いに行くなど長時間部屋を開ける時には弛めに手だけ抑制していきましたが、幸いふうちゃんはほとんどドレーンや点滴の側に手をやったりしなかったので安心していられました。
 ママが平然としていたからかもしれませんが、昼間抑制を全部解いてしまっていることを誰も咎めませんでした。

 そういえば、この日、ふうちゃんは再手術後初めて洗髪してもらいました。
 ドレーンをつけたまま起きあがることもできないのにどうやって洗髪するのかな、と思ったら、こういうスグレモノがあるのですね。下にバケツを置き水がそこに流れるようになっています。
ふうちゃんのお腹の方から2本伸びている管がドレーンです。

 ふうちゃんは個室に戻ってからずっと平熱が続いていましたが、この日夕方になって7度5分の熱を出しました。アイスパックで冷やしていたら下がりましたが、まだまだ油断はできないと思い知らされました。
 ドレーンからも、ものすごく汚いものが出ています。前回の手術後は、赤い色のさらさらした液体でしたが、今回は白く、ところどころ血の色をしたどろっとした膿のような感じのものです。ベッドサイドに置いたドレーンバッグに溜まるようになっているのですが、膿のような固まりが沈殿しています。悪いものは身体から出てしまわないと困るのだそうですが、それにしても汚い・・・。

 この日の夜、パパが来てくれました。
 たまたまS先生がいたので、お願いをして話を聞くことにしました。パパは親友の医師にMRSAのことを色々聞いてくれていました。
 以下はその時聞いた内容です。

●MRSAの治療に使っているのはハベカシンという抗生剤です。もう一つ、MRSAの治療ではバンコマイシンという薬が有効ですが、ハベカシンの方が細菌培養で効果が高かったので、バンコマイシンは使っていません。
●ハベカシンもバンコマイシンも、とても強い抗生剤です。副作用としては肝臓・腎臓の機能に影響がでることがあります。また、長期間使用するとまれに難聴を引き起こすことがあります。
これについては、まめに血液検査をして、炎症反応や肝機能・腎機能の状態を調べて、抗生剤の量を調節することで予防します。
●6/3から細菌培養の結果が出るまで使用していた抗生剤は、残念ながらMRSAには効果がないものでした。ですから、6/6の夜以降、ハベカシンがどう効いて来たか、を今後見ていくことになります。
●その他にカルベニンという抗生剤も併用しています。あと、この状態で他の病気に感染すると大変なので、免疫力を強化するため、免疫グロブリンも使っています。
●とにかく平熱の間にいっぱい食べて寝て、体力をつけることが一番大切です。

 パパの親友の医師も「口から食事をたくさん食べられているならまず大丈夫」と言っているとのことでした。やはり点滴だけでは生きていくのに必要なだけの栄養しか入らないので、食事をしっかり食べさせることはとても重要なのです。

●ふうちゃんブロイラー作戦、決行!
 逆にいえば、ママが付き添いとしてできることは、ふうちゃんが睡眠をしっかり取れるようにすることと、食事をきちんと取らせることしかありません。
 そこで、ママは“ふうちゃんブロイラー作戦”を実行することにしました。3度の食事はもちろん、その他の時間も暇さえあれば何か食べさせること。やれ食え、それ食え、です。ふうちゃんは大好きなプチダノンやミックスフルーツをママがせっせとくれるので、きっとびっくりしたかも。いつもなら「一日一回だけね」とか言って食べさせてもらえないのにね・・・。

 ふうちゃんはごはんなどが苦手でほとんど食べないので、炭水化物対策としてバナナも毎日一本以上食べさせました。
 ふうちゃんがあまり食べないと、怖い顔をしておどしたり騙したりして食べさせたりもしちゃいました。
 ポケモンをプレイされた方ならご存じだと思いますが、ポケモンの技の中に“こわいかお”っていうのがあります。“こわいかお”をすると、相手の防御力が“がくっとさがる”のです。ママはふうちゃんが入院中暇だったので、ゲームボーイを持ち込んでポケモンをやっていたのですが、ふうちゃんに食事を食べさせる時は罪悪感を持ちながら怖い顔をしていました。ごめんね、ふうちゃん・・・。

●ママにポケモン友だちが出来た!
 
さらにポケモンの話をしますと・・・。
 ふうちゃんの消毒を部屋の外で待っている間、ママが暇つぶしにポケモンをやっていると、車椅子の男の子が通りかかり、「ねーねー、交換しよ」。小さなポケモン友だちができました。
 パパ以外とは初めてのポケモン交換でした。看護婦さんの話では、入院してくる小学生以上の子はみんなポケモンをやっていて、病室で交換し合っているのだとか。「私はやらないので、話題についていけないんですよー」と、ママよりはるかに若そうなその看護婦さんは言っていました(^_^;。
 その子とはその後も何度もポケモン交換をしました。ある日「学校行けなくて淋しくない?」と聞いたら、「淋しい。まだ学校いってないけど」。ええっ!何と彼は幼稚園の年少さんだったんです。
 “ホウオウ”(ポケモンのキャラクター)のことを“ホウボウ”とか言ってるし、ちょっと変だとは思ったんだけど、話なんかとっても大人っぽくて、小学校2年生くらいかと思ってたよー。今時の年少さんはカタカナもひらがなも読めるんだね・・・。
 その子は6月半ば、ママがばあばと交替してもらって家に戻っている時に退院してしまいました。退院はおめでたいことだけど、あっけない別れでした・・・。