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2000年10月から、ふうちゃんは民間の障害児専門の保育施設「つぼみの会」に通い始めました。12月から区立の保育園に入園したので、結局在籍したのはたったの2ヶ月でしたが、「つぼみの会」からは本当に大きな元気をもらいました。
私たちが新居を今住んでいる場所に決めた理由の一つは、この「つぼみの会」があるためでした。心臓の手術が終わりふうちゃんも元気になったので、これからは積極的にお友達と関わりを持たせていきたい(これまでは風邪などをもらうとすぐ悪化してしまうので、誰かがクシャミしていると公園から逃げてしまったりという生活でしたから・・・。これを医学用語では“易感染性”といい、手術によってその心配がなくなりました)と思ったことと、心臓の手術が終わるまでは・・・と仕事を泣く泣く中断していたママが社会復帰を切に願っていたので、ママの日中の時間をあけるためです。
更に本音を言えば、心臓の手術後みんなに甘やかされたふうちゃんは、この頃ものすごい女王様になってしまっていて、一日べったり親子で過ごすと平和に過ごせなくなっていました。
8時間以上にわたる心臓の手術、感染による再手術、2週間以上の拘束されての寝たきりの日々、さらにそれに付随する検査、検査、検査・・・。わけがわからず押さえつけられ、無理矢理痛いことばかりされる日々。ふつうの大人でもほとんどしたことがないような壮絶な体験を3歳でしてしまったのですから、初めは仕方ないと思いました。でも、やはりホトケのような母親をやるにも限界があります。何か気にくわないと、ささいなことでも大きな声で泣き叫び、悪態をつき、それが一日何度も何度も繰り返される・・・。理性では可哀想だと思っていても、心の中ではウンザリ。平和に暮らし、愛情にあふれた無理のない親子関係を継続していくためにも、日中ふうちゃんと離れることは必要でした。
「つぼみの会」は、区立ではなく、通所する障害児の親たちが運営する民間の障害児保育訓練施設です(ただ、区のバックアップを受けているので区民でないと利用することはできません)。2001年に開設25年を迎えます。
基本的には火曜日〜土曜日の朝10時から午後15時まで、母親が働いていなくても預かってもらうことができ、理由がある場合には延長保育もしてくれます。定員15名に対し常勤の先生は4名、その他にフルタイムに近い非常勤の先生1名と、大勢のボランティアさん(1日2〜3名)が保育を支えてくれます。
一日の流れは保育園とそれほど変わりません。朝の集まりがあり、晴れていればお散歩に行き、お弁当を食べ、お昼寝をし、自由遊びをして、お帰り。
このような民間の施設は全国的に見ても本当に希少価値なのではないかと思います(公立は結構あるようですが・・・)。現にメンバーの中には、「つぼみの会」に入るためにこちらに引っ越してきた、という方も我が家を含めて何人かいらっしゃいました。
「つぼみの会」の何よりすごいところは、区立の保育園に入園を断られてしまうような重度のお子さん、医療的ケアを必要とするお子さんでも預かってくれるということです。何かあると責任問題になってしまうので公立では受け入れられない子供(でも本当はそういう子供ほど、色々な人の手が必要なんです)を預かって、お弁当も食べさせてくれるのです。これは本当にプロフェッショナルでないとできない仕事です。
子供たちにとって「つぼみの会」で過ごす時間は本当に素晴らしい、貴重な時間です。集団保育でしか受けられない刺激は数多くあります。晴れた日は必ずお散歩に連れていってくれます。近隣にある都立の素晴らしい公園に行ったり、ミニ動物園に行ったり・・・。
今医療の現場ではQOL(生活の質)を上げる、ということが重要視されています。たとえ病状の回復が見込めない人でも、毎日を楽しく生きることができれば少なくとも不幸ではないはずだからです。
障害児の場合も同様です。健常児に比べたら色々な面で不自由だし、辛いことや悲しいこと、苦労も諦めの気持ちも多い子供たち。でも、少しでもQOLを上げてあげたいし、幸せを感じさせてあげたい。
日々の生活を回していくだけで大変な親といるよりも、「つぼみの会」で優しい先生やお友達と過ごす時間の方が、行動の幅も広いし体験できることもはるかに多いのです。
そして、「つぼみの会」は母親を日中解放する、という意味でも大きな意味を持っています。
障害児のいらっしゃらないご家庭の方にどんなに言葉を尽くして説明しても、やはり障害児のいる大変さを理解していただくのは難しい、と思います。障害が重度になればなるほど、肉体的にも心理的にも負担は大きいです。身体障害児で常に医療的ケアを要する方の場合は(私もきっと理解していないですが)尚更です。「つぼみの会」のような施設がなければ介助のほとんど全てを母親が背負わなくてはなりません。老人介護が大きな問題になっていますが、同様に障害児の介護も重労働であり、終わりがないのです。
・・・永遠に続くその日々の中で、毎日5時間くらい解放してもらえたら。
その空いている時間に買い物など、外出の用を済ませなければなりません。いない間しかできない家事もたくさんあります。5時間あるじゃないか、といっても自分の時間はほんのわずか。
それでも、ずいぶん救われるのです。ふうちゃんは身体障害を持っていないのでだいぶ楽な方かもしれませんが、毎日ミキサー食を作り、食べさせるだけでも大変です。夕食(ふうちゃんのための特別メニュー)は作る時間も含めると1時間半以上かかっています。ふうちゃんが自分で普通食を食べてくれるようになる遠い遠い将来まで、私の24時間の中の1時間半はずっとふうちゃんの食事のために費やされるのです。時にはイヤになります。滅入ってしまうこともあります。そんな時、一人で外食して心おきなく美味しいものを食べられるだけで、また頑張ろう、という力が湧いてきます。
「つぼみの会」に通園するようになって、ふうちゃんは退院後エスカレートしていた自傷行為(気にくわないことがあると自分の頭をペチペチ殴ること)が目に見えて減ってきました。最初の何日かは泣きましたが、すぐに慣れて、ママと一緒に「つぼみの会」の玄関まで来ると、さっさと行ってしまうようになりました。
また、退院後外を歩くのを極端に嫌がるようになってしまったふうちゃんが、「つぼみの会」へ通う道(通園バスがあるのですがうちは往路は利用しなかったのです)歩くようになってくれたこともすごく嬉しいことでした。我が家から「つぼみの会」までは、約1キロあります。大人の早足で15分程度かかる距離を、ふうちゃんは毎日歩いて通ってくれました(文句はいっぱい言ってましたけど・・・)。
「つぼみの会」にふうちゃんが毎日行ってくれるようになったおかげで、私は10月半ばから仕事を再開することができました。といっても、もちろんパートなんですけど。ふうちゃんの発達の遅れが顕著になって仕事をすっぱり辞めて以来ほぼ2年ぶりだったので、社会復帰、というだけでものすごく嬉しいことでした。
11月に公立の保育園の2001年4月からの入園募集があり応募したところ、たまたま近所の保育園の定員に空きが出て、翌月の12月から入れてもらえることになりました。「つぼみの会」は月曜日がお休みなのと保育時間の長さの関係で、やっぱり公立の保育園の方が(私の仕事のために)嬉しいのです。それでせっかく親子ともども大好きになった「つぼみの会」はたったの2ヶ月で辞めることになってしまいました。
でも、「つぼみの会」がなければふうちゃんを抱えて仕事を探すこともできなかったし、面接に行くことすらできなかったでしょう。仕事がなければ保育園に入れてもらうことはできなかったのですから、今の我が家の状況は「つぼみの会」が作り出してくれたものなのです。
障害児と母親のQOLのために、「つぼみの会」のような施設がたくさんできることを心から願います。
「つぼみの会」の皆さん、先生方、ほんとうにありがとうございました。
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