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手術後、ふうちゃんは「抑制」されました。
抑制とは、動けないように主に手足を縛ることです。高齢者施設や病院でよく問題になっているのでご存じだと思いますが、「抑制」とは上手く言ったもので、はっきり言って「拘束」もしくは「束縛」です。
子供の場合は、手足をベッドの柵に包帯で縛るとともに、抑制着というベストを着せて、ベストの背についているヒモを頭の上の柵と左右の柵に通して縛ります。抑制着によってベッドから身体を起こすことは全くできなくなり、仰向けの絶対安静が保たれるようになっています。
心臓の手術後ふうちゃんが抑制されることは、予め看護婦さんから聞いて了解していました。ふうちゃんに「動いちゃダメ」とか「点滴を触ったり取ったりしちゃダメ」と言っても聞かないでしょうし、術後はとにかく絶対安静が必要です。少しの間なんだから耐えてもらうしかない、と思いました。ふうちゃんはまだ理解できないでしょうが、“動かせるのに動いちゃいけない”というのも大変辛いものがありますからね・・・。
事実、心臓の手術後の抑制はたったの2日間だったので、私は当然のこととして受けとめました。確かに可哀想でしたが、その頃は点滴やらドレーンやらセンサーやらでふうちゃんはヒモだらけ。抑制よりもそちらの方がもっと可哀想でしたし。
再手術後、ふうちゃんの抑制は10日間に及びました。心のうと前縦隔から汚い膿のような体液を体外に排出するためのドレーンがつけられていて、抜いてしまうと汚い体液が身体の中に残ってしまい、大変なことになるからです。
結局ドレーンが取れるまで抑制着による抑制は続きました。
心臓の項にも書きましたが、最初の頃は抑制着による抑制があまりにきついため、ふうちゃんは仰向け以外の体勢が取れず、身体の角度を変えることも、ほんの少し身体をねじることも出来ませんでした。
これは、普段カメのようになって寝る習慣のあるふうちゃんにはかなり辛いことだったと思います。事実、睡眠中身体の向きをちょっと変えようとして抑制に阻まれ、一時間おきに起きてしまう、ということが何度かありました。
それで私はふうちゃんが90度まで身体をねじることができるように抑制着のヒモを弛めました。ふうちゃんが身体ごと左右を向けるようにしたのです。さすがに寝返りを打ってうつ伏せになるのはマズイだろうと思いましたが、そのころのふうちゃんにとっては、体力をつけることが治療と同じくらい大切でしたから、抑制のために睡眠が良く取れないのでは逆効果だと思ったのです。
その日あとで担当の先生に聞いてみると、ドレーンと点滴を引き抜かないようにするのが目的なので、抑制着を弛めて左右を向けるようにすることは問題ないし、足は縛る必要なしと言われました。
ふうちゃんは、たまたま私が付き添って抑制を弛めてあげられたので、抑制されながらも何とかその後の1週間耐えることができましたが、仰向けにきつく抑制されたまま10日間過ごしたとしたら、きっとかなり精神的にダメージを受けたと思います(それでなくても十分ダメージは受けているんですから・・・)。
また私は手足の抑制も自分の責任で解いてしまいましたが、もし付き添っていなければ、十分な目が行き届かないのでずっと縛られたままでいたはずです。
気がついたのは、看護婦さんにとって抑制は、するか・しないか、の選択肢しかない、ということです。だから抑制する場合はきっちりと隙なく縛り上げてしまいます。抑制中、抑制着を変えたりシーツ交換した時には、後で弛めるのが大変でした。ヒモを弛めていいことは医師に言われており、みなさん知っているはずなんですが、習慣できつくしてしまうのですね。
・・・抑制という人間の尊厳に直結する行為が、こういう風に画一的になされてしまっていいのだろうか。
ふうちゃんにはふうちゃんのための抑制、AさんにはAさんのための抑制と、病気や安静度などによって抑制の仕方は人それぞれ異なるはずです。
忙しく人手も足りない中で事故や危険を起こさないためには、抑制も必要な時はあると思います。
でも、その人その人に合わせた状況への対応を考えるのが“治療”であり、“看護”であるはずだと思うのですが・・・。
ここで看護婦さんたちの名誉のために言っておくと、ふうちゃんの病棟の看護婦さんはみなさん親切でしたし、本当に良くキビキビと働いていらっしゃいました。
お風呂や清拭は土・日も含めて毎日必ずやってくれましたし(私のほうが面倒で、毎日じゃなくてもいいのに、なんて思ったりしたくらいでした)本当にきめの細かい看護をして下さいました。婦長さんはふうちゃん以上に私の精神面をずっと気にしてフォローしてくれました。
今回1ヶ月以上私も入院していたようなもので、初めてわかりましたが、本当に看護婦さんというのはスゴイ仕事だと頭が下がる思いがしました。
医療も看護も介護も結局は“人”なんですよね。
例えば定時の検温も、時間だから、とふうちゃんが寝ているのに無理矢理叩き起こして測定していく看護婦さんもいれば、おでこを触って異常ないですね、と見逃してくれる看護婦さんもいます。
ふうちゃんの体調チェックが目的なら、おでこを触ってみればだいたいのことはわかる。でも、自分たちの交替の時の申し送りのためには数字がノートに書き込まれている必要がある。
目的がズレてしまうと、“看護”がただの“事務”になってしまう。
心の深いところに大きなダメージを与える抑制を、“事務”的な作業にしてしまわないで欲しい。イヤなことだけど、一人一人に合わせた必要最低限の抑制なら、まだ納得することはできるから・・・。
自分が抑制されたわけではないけれど、抑制について、看護について色々考えさせられた今回の入院でした。
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