♪保育園との交渉・2♪

 りんご組になっていちばん困ったのは、連絡帳がなくなってしまったことでした。
 我が家の住んでいる自治体では、連絡帳は乳児まで(0〜2歳児)は必須なのですが、幼児(3歳児以上)は任意となっています。5歳児まで全員連絡帳のある保育園もあれば、3歳児から連絡帳のなくなってしまう園もあり、その判断は各園の園長先生に委ねられているのです。
 ふうちゃんの園では、連絡帳がなくなる代わりにクラスの窓のところにホワイトボードが設置され、「今日は○○公園にお散歩に行きました。先日作った凧をあげてみましたが、スイスイ上がってみんな大喜びでしたよ!」などとその日の様子が書かれています。幼児さん以上の保護者はそちらを読んでください、というわけです。

 でも、ふうちゃんには連絡帳は絶対に必要でした。
 幼児さんから連絡帳がなくなる理由の一つは、帰り道に「今日はこんなことしてね・・・」とお子さんとお母さんがコミュニケーション出来るから、だというのです。とすれば、まだお話が出来ないふうちゃんには連絡帳は必要です。
 さらに、ふうちゃんの場合、「みんなのその日の様子」としてホワイトボードに書いてあることがあまり当てはまらないことが多いと思われました。例えば前の例で言えば、みんなと一緒に公園には行ったでしょう。でも、凧揚げなんて100パーセントしてないでしょう(できないし・・・笑)。じゃあ、公園で何をしてたの?何を見て、何を楽しんでたの?みんなの揚げた凧に興味は示したの?そういうことを知りたいんです。
 担任の先生にやんわりと言ってみました。しかし、案の定「ふうちゃんのことは私たちでは何も決められないんですよ。全て園長預かりなので」というお決まりの答えが返ってきました。
 ただ、園長先生はかなり手強い・・・ということは今までの経験からだいぶわかってきていました。私が一人でお願いしにいっても、多分聞いてはもらえないだろう。そこで、パパと一緒に、お願いを書面の形にして持っていくことにしました。

 まず、土曜日にアポを取ろうと、園長先生にお話しました。すると「土曜日は保育者が少ないので、園長も戦力のうちなんですよ。だからお会いできません」。「15分でも構いませんので」というと、「毎月一度しか土曜日は出勤していないんですよ。忙しいので、当日にならないと時間は決められませんが宜しいですか?最悪お会いできないかもしれません」。とにかく面談を逃げてかかろうというような姿勢が見て取れました。
 そして当日。子供達のお昼寝の時間に来てください、と電話がありました。ふうちゃんは土曜日はお休みですが、その時間に寝かしつけ、夫婦でガンクビ揃えて保育園へ。
 雑談を少し交わした後、パパが書面を取り出し、説明しながらお渡ししました。〈連絡帳の復活〉と〈月一度の担任の先生との話し合いの場の設置〉のお願いを柱として、あといくつか細かいお願いを添えました。

 〈月一度の話し合いの場の設置〉は、もっともっと深いレベルで担任の先生とのコミュニケーションを取るために要望したことでした。
 入園してから4ヶ月余り、ふうちゃんの障害について知ろう、とか、理解しよう、という姿勢が残念ながら担任の先生方にはほとんど見られなかったからです。送迎時に先生方から私に質問してくることはごく稀にしかなく、逆に何か言おうとすると「私たちは保育のプロですから」と親の口出しを敬遠するような印象もありました。でもやっぱり親としては伝えたいことが山ほどあるのです。
 本人の個性ではなく障害のために、苦手なことやできないこと・こだわりがあるのだということ、同年代の子供たちより能力的には劣っているけれど、プライドは人一倍高いのだということ。
 例えばふうちゃんは、みんながやっている遊びをやりたくても、素直に加わることが出来ません。とても怖がりだからです。自分から「やりたい」という意思表示などとても出来ませんし、先生に誘われても逃げてしまうでしょう。でも、それは「やりたくない」のではないのです。本当は「とてもやりたい、でも怖い」なのです。そして結局加わることのできなかった遊びにずっと心を残している・・・。ただでさえ話せなくて意思表示がスムーズにいかない上に、そういう切ない経験をたくさんしているのだということを知ってもらえたら、先生の対応も変わってくるのではないかと思ったからです。
 別に障害児について特別に勉強してもらいたいとは望んでいませんでした。でも先生方が「保育のプロ」なら、私は「ふうちゃんのプロ」です。毎日7時間もふうちゃんを預かるのだから、やはりふうちゃんについて良く理解してもらいたい。そのためには、送迎時の立ち話では不足です。双方の「プロ」の力を合わせてふうちゃんをより良い方向に持って行けたら。そう思ったのです。 

 「ふーん。わかりました。連絡帳は、今までも是非に、とおっしゃるご家庭では続けたこともあるんですよ。担任とも相談して検討しますね」と園長先生。
 え?意外とアッサリ・・・?
 ちょっと拍子抜けした我が家。わざわざパパまで出すことはなかったか。それともパパを出したから?

 ・・・・ところが。

 話し合いをしたのは4月の終わり頃でした。GW明けには返事を貰えると思っていたのですが、ありません。送迎時、園長先生と顔を合わせても、ニコニコするばかり。
 2週間、3週間が過ぎても、まだ返事がありません。私は内心イライラしていたのですが、保育園からの自発的回答を待ちたいと思い、じっと我慢をしていました。文書でお渡ししたんだから、絶対向こうから回答してくるはず。そう思ったからです。
 結局何も回答がないまま、1ヶ月が過ぎました。さすがにしびれを切らした私は、担任の先生に「あの件、どうなったでしょうか」と聞いてみました。すると・・・。
 「あ、あの件ですね。今、園長に聞いてきますので」とH先生。しばらくして「園長がお話するそうですので、今お時間宜しいですか?」

 なんなんだ〜、一ヶ月も回答をほっぽらかして、私が催促しなければ答えないつもりでいたのかい(メ-_-) !

 怒る気持ちを抑えて、職員室へ。すると園長先生がニコニコして待っていました。
 「お返事遅くなってすみませんでしたね。色々担任とも話し合ったんですけど、連絡帳をわざわざ書かなくても、お迎えの時に担任としっかりその日のことについてお話してもらえば十分足りると私たちは考えているんですよ。それから、月一度の担任との打ち合わせの件も、やっぱり忙しくてスケジュールが取りにくいんですよね。打ち合わせとなると担任二人揃わなくてはいけないし、お昼寝の時間は会議やら雑用が色々あるんですよ。ですからできない、ということで・・・」

 一ヶ月ほっぽらかして、回答がこれかよっ!凸(`0´)凸

 とりあえず、連絡帳の件は食い下がってみることにしました。
 「でも先生、娘はお話が出来ないので、連絡帳はないと不安なんです。送迎時の立ち話、といっても先生もお忙しくて十分お時間取れないことも多いですし・・・」
 すると園長先生は満面の笑顔で、「どうしても連絡帳がないと不安だというなら、お母さんの側から毎日提出していただくのは構いません。ただ、それに対して担任が毎日お返事を書くことはできませんが」とのたまったのでした。

 それじゃ、何にもならないだろーが! (▼O▼メ)

 呆れてものも言えなかったのですが、その日はそのまま帰ってきました。食い下がったからと言って結論を変えてくれるわけがないと思ったからです。
 夜、パパに話すと、パパも怒ってしまいました。
 面談のアポを取るところからしてひどかったけれど、文書でお願いしたことに対して一ヶ月以上回答を保留し、催促されてやっと出した答えが「何も変えません、何もしません」。公務員的、といえば公務員的ですが、あまりに誠意がない態度・・・。

 それからの一週間、私はあちらこちらにこの件を相談しまくりました。正直なところ園長先生の対応は私の常識をはるかに超えるもので、自分の考え方が果たして正しいのか、自信が持てなくなってしまったのです。
 ・・・我が家がお願いしたことは、そんなに保育園にとって大変(もしくは非常識)なことだったんだろうか?
 ネットで保育園や幼稚園に通う障害児をお持ちの方に聞いてみたところ、保育園では当然のように、そしてお昼寝の時間のない幼稚園でも連絡帳をやり取りしている方が数多くいらっしゃいました。ふうちゃんの園のように幼児から連絡帳がなくなってしまう園でも「○○ちゃんは連絡帳を続けようね」と先生の側から言ってくださった、というところもありました。
 そして先生との打ち合わせの件も、月一度という頻度かどうかは別として、何人もの方がやっていらっしゃいました。中には園の側から打ち合わせの場を持ちましょう、と言ってくださったという方も 。また、ほとんど毎日、担任の先生が電話をかけてその日の様子を話してくださったりわからないことを聞いてくださるので、打ち合わせの必要がない、と言う方もいらっしゃいました。
 また、区の療育センターの先生方にも相談してみましたが、「打ち合わせは確かに時間を取るのが難しいかもしれないけど、連絡帳はどうして書けないというのかしらねぇ・・・」と首をかしげていらっしゃいました。

 ううう・・・・(涙)
 パパは「区の保育課に相談する」と言いました。
 でも・・・。
 保育課というのは、保育園を統括する“本部”です。そこに問題を上げるということは、園長先生に恥をかかせることになってしまいます。
 ケンカするのは簡単ですが、やはりこちらは子供を預かっていただく立場。なるべく平和にやっていきたい。親と保育者が関係を悪くして結局しわ寄せを喰らうのは子供だからです。

 そこで、最後の手段として、私がもう一度お願いに行ってみることにしました。
 連絡帳はどうしても復活させたい。毎日書くのができないというなら、一週間に一度でもいいということで、連絡帳のたたき台を作りました。
 担任とのミーティングも、月一度が難しいならもっと頻度はゆるやかでもいい。
 それでも出来ないなら、何故出来ないのかを“書面”で回答ください、という文書を作りました。

 文書はお昼寝の時間にアポなしで渡しに行くことにしました。アポを取るとまた先延ばしされそうだし、言いたいことはきちんと書いたので、読めばわかるからです。
 ドキドキしながら保育園に行くと、何と職員会議中。こりゃ、まずい日に来ちゃったな・・・。
 担任のH先生が出てきました。「今日はちょっとマズイので、また日を改めていただけますか?」というので、「イエ、これを園長先生にお渡しいただくだけで結構です。前回の回答と1ヶ月回答を放置したあまりの誠意のない態度に、<主人>が大変怒ってしまって、『保育課と直接相談する』と言っています。ワタシ、それでとっても困ってしまって・・・」(←カワイコぶりっこ)
 H先生も、そこまで言われて書類をつっかえすわけに行かず、「じゃ、園長に渡しておきますね」と受け取ってくれたのでした。

 ここまで脅しをかけても態度が変わらないなら、本当に保育課に相談しよう。
 そう思っていたら・・・。

 今度の回答は早かったです(爆)。3日後には口頭で「連絡帳は復活させて、毎日やりとりしましょう」、「担任とのミーティングも調整して持ちましょう」という回答が来ました。

 ばんざーい\(^O^)/。

 終わりよければ全てよし (^_^)。
 <主人>が激怒、が効いたのかな、やっぱり「保育課に相談する」かな。

 そしてその翌週から連絡帳は復活、6月の半ばに担任との初ミーティングの日が設定されたのでした・・・。