今回のハワイ旅行で、我が家は外食をほとんどしませんでした。外での飲食と言えば、旅行会社が無料で提供していた朝食のレストランと、コーヒー中毒のママが禁断症状にならないために利用した(コンドミニアムには炊飯器はあったけどコーヒーメーカーはなかったので)免税店のスターバックスコーヒーか100%コナを飲ませる喫茶店くらい。
 パパとママは外食しても良かったんですけど、ふうちゃんが退屈して騒いだり、外に出せ!と怒ってしまうと、どちらかがふうちゃんにつき合わなければならないので、結局食事を楽しむ、という雰囲気にならないんです。
 そんな理由で、普段から我が家は外食をほとんどしません。結婚記念日やクリスマスなど、年に数回気合いを入れた外食をしたいときは、申し訳ないけどママの実家にお願いしてふうちゃんを預かってもらって二人で行くという感じです。
 我が家はお酒も割といけるほうなので、今回も二人で楽しみながら食事をするとなると、結局コンドミニアムで、ふうちゃんを自由に遊ばせながらゆっくり食べた方がよっぽどいい・・・ということになりました。ま、その方がお酒も飲み放題で安上がりですしね。

 でも、一回くらいは夕食を食べに行きたい。やっぱりそう思いますよね。
 そこで、ハワイ最後の夜は外食をすることにしました。お酒を楽しみながらだと1時間半はかかるので、ちょっと無謀かな?とも思ったのですが、ダメもとで行ってみることにしました。

 さて、何を食べようか。
 しょっぱなからフランス料理やイタめしは外しました。他のお客さんにご迷惑をかけてはいけないと思ったからです。カジュアルでいいけど、ちょっとおしゃれなところ。外食したー!って満足感を味わえるところがいい。
 それで思いついたのが、「オーシャナリウム」っていうレストラン。壁面が巨大な水槽になっていて、色々な魚が泳いでいる真横で食事ができるので、海の中にいるような感覚を楽しめる、カジュアルダイニングです。ママがものすごーい昔に一度行ったことがあって、ここならふうちゃんも楽しめるのではないかと思ったんです。レストランのあるパシフィックビーチホテルが、我が家の滞在するワイキキ・バニヤンから歩いて5分もかからないところにあることも決め手になりました。

 レストランに行くと、「もうちょっとで水槽の隣の席が空くのでお待ちいただけますか?」と聞いてくれました。子連れだったせいだと思いますが、ふうちゃんには水槽を間近で見せたいと思っていたので、嬉しい配慮でした。
 そして、席に通された途端、ふうちゃんは狂喜乱舞しました。ふうちゃんは嬉しい時、両手を前でたくさん振るんです。これを私たちは「うれしうれし」と呼んでいますが、激しく「うれしうれし」を始め、パパとママの顔を交互に見て、最高の笑顔を見せてくれました。
 水槽のガラスの前にふうちゃんが椅子の上に立ってちょうど頭が出るくらいの柵があったので、安心してふうちゃんを椅子に立たせておき、私たちはメニュー選びに専心しました。前菜に魚貝の盛り合わせ、シーザーサラダとクラムチャウダーを頼んで、パパはステーキ、ママはカニクリームの魚貝のパスタを食べることにしました。ワインはカリフォルニアの赤を一本お願いしました。
 水槽(というか、はっきり言って水族館みたい)の中にはたくさんの魚がいました。色とりどりの熱帯魚はもちろんのこと、エイやサメ(らしきもの)、果てはナポレオンフィッシュまで。その魚たちが全くものおじせずに悠々と泳いでは、ふうちゃんの目と鼻の先を通り過ぎて行くのです。
 前菜をゆっくりと食べ終えても、ふうちゃんはずっと「うれしうれし」していました。手が疲れるよ、と言いたくなるくらいです。ふうちゃんを横に置いてこんなにゆったりと食事が取れるなんて考えてもみませんでしたし、ふうちゃんの最高の笑顔は食事をますますおいしくしてくれました。

 前にも書いたのですが、ふうちゃんには“クレーン現象”があります。“クレーン現象”とは、まさにその言葉の通り周囲にいる大人の手を、クレーンのように使って自分の意志を表現することです<これは学術的に調べた定義ではありません、念のため>。言葉の遅い子に良く見られるらしいのですが、ふうちゃんの場合は指さしを自分ではせず、ママやパパにさせるためにクレーンを使うことが多いです。例えば絵本の中の動物をママに指ささせるのは、ママにその動物の名前を言ってほしいからなんです。
 レストランでもクレーンが出ました。ママがサラダを食べていると、いきなり“むんず”とふうちゃんの手が伸びてきて、ママの右手を抱え込み、魚を指ささせたのです。
 「えーっと、これはエンゼルフィッシュさん(ウソ!)」「向こうはナポレオンフィッシュさん(これはホント)」「これはサメ、サメ、サメさん」「えーっと、良くわからない熱帯魚さん」「これはかっこいいからモダンでおしゃれなお魚さん・・・」
 と、ママは8割がたテキトーに魚の名前をふうちゃんに教えます(だってわからないからしょうがないんです!)。そして、この“魚の指さし”にまたまたふうちゃんははまってしまいました。ママが隙を見て右手を元に戻し、フォークを握るとふうちゃんがすごい勢いで奪い返しに来ます。おかげで、ママはサラダ以降、右手をふうちゃんに拉致されて使えなくなってしまったのでした。

 レストランに行く前、ママはふうちゃんがお魚を見て喜ぶだろうとは予想したものの、多分10分くらいしか持たないだろう、と考えていました。ところが、予想は嬉しい方に外れて、メインディッシュを食べ終えても、ワインを飲み終えても、ふうちゃんは椅子に立ちっぱなし。席についてから一時間は軽く超えていましたが、目の前で繰り広げられる魚のショーにずっと興奮しっぱなしでした。
 おかげでパパとママは(片手は使えなかったものの)ゆっくりとディナーを楽しむことができました。

 コンドミニアムへの帰り道、ふうちゃんは1時間半以上ずっと椅子に立ちっぱなしだったので、さすがに疲れたようでした。パパがふうちゃんを抱っこして、ゆっくりと歩きながら、今日のディナーは最高に美味しかった、としみじみ思ったパパとママなのでした。