
ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの祭壇画です。イエスの誕生を寿ぐ東方三賢王の礼拝の図ですが,中央の赤い靴下の青年はメディチ家ではなく,ライバルであったストロッツィ家の御曹司かも知れません。下段3枚の絵の右側は複製で,本物はパリのルーブルにあります,どんな事情でフランスに渡ったのでしょうか。
絵の上部の騎馬の行進は,メディチ家リッカルディ宮殿の絵にも描かれています。そちらはメディチ家の御曹司(ロレンツォ・イル・マニフィコ)が描かれており,とても彩やかで綺麗ですが,礼拝堂が狭いのでうまく写せませんでした。隣の部屋には片目の傭兵隊長,ウルビーノのフェデリーゴ・ダ・モンテフェルトロ夫妻の絵がお互いを見つめる様に置かれています。
ウルビーノのお城にもルネッサンス期の絵画が沢山あり,何時か訪れたいと思っています。この美術館の目玉は,サンドロ・ボッティチェルリの「春」と「ヴィーナスの誕生」ですが,爆弾テロ事件の後は薄青い防弾ガラスが前面に置かれ,本来の色と少し違って見えるのが残念です。
どの部屋も珠玉の名品ばかりですが,最後の方にカラヴァッジョの絵があります。廊下の天井にはグロテスクと言われる模様が描かれていますが,ポンペイに残る壁画に近いものを感じます。グロテスクとはピッティ宮殿の庭に残る人造のグロッタ(洞窟)やローマの地下宮殿に由来するとか。
東棟中央のトリブーナと呼ばれる天井の高い八角形の特別室には,メディチ家ゆかりの絵が並んでいます。ブロンツィーノの描くコジモT世の妃,エレオノーラ・ダ・トレドのビロードの服は触ってみたい程見事です。同じブロンツィーノの三叉矛(トライデント)を持つネプチューンに粉するコジモT世の絵はミラノのブレラ絵画館で見ました。
コジモT世がフィレンツェの主となる前夜の話が塩野七生さんの「メディチ家殺人事件」で,これは実話に基いています。当時のトスカーナ大公コジモT世には「天正の少年使節」が謁見しており,彼等の1人が『為向後如此候』と書き付けた物が今でもフィレンツェに残っているそうです。彼等も花の大聖堂のミサに参列したのでしょう。