Substitute (The Songs Of The Who)
1. The Seeker / Cast
2. Anyway, Anyhow, Anywhere / Ocean Colour Scene
3. Circles / Paul Weller
4. Pictures Of Lily / David Bowie
5. The Kids Are Alright / Pearl Jal
6. The Real Me / Fastball
7. Naked Eye / Unamerican
8. Who Are You / Stereophonics
9. 5.15 / Phish
10. Behind Blue Eyes / Sheryl Crow
11. Substitute / The Who Featuring Kelly Jones
本作は、ザ・フーのトリビュート・アルバムである。この企画は、今回が初めてではない。例えば、1993年には「フー・カバーズ・フー」というアルバムが発表されている。しかし、はっきり言って、「どれも、オリジナルに対してかなり劣る出来」であったと思う。その他にも、ザ・フーのカバー作品を幾つか聴いたことがあるが、極く一部の例外を除くと、「金を出して買うほどのものではない」という感想しか持てなかった。
では、本作はどうであろうか。「フー・カバーズ・フー」が、主として英国の若手バンドが中心になっていたのと異なり(ちなみに、ブラーも参加していた)、本作では主として中堅アーティストが参加している。そのせいか、ザ・フー作品のカバーを演る場合に、しばしば問題となる演奏力の拙さは、かなり克服されているようだ。また、デヴィッド・ボウイを除いて、オリジナルに近いアレンジになっていることも、無難な選択だったと思う。また、楽曲に関しても、初期から後期まで幅が広く選ばれており、この点については、非常に嬉しい。「ピート・タウンゼンド認可の」という触れこみだけのことはある。
逆に言えば、これまで強かった、「元祖パンクとしてのザ・フー」なるイメージが、払拭されているようにも思える。初期の曲も選ばれてはいるが、決して初期衝動の表現という形ではない。むしろ、全ての曲に渡ってニュートラルな感触を受ける。これは、最早ザ・フーがオルタナティブではなく、スタンダードになったことの表れなのかもしれない。
なお、本作のことを、「これを聴かなきゃ損をする」とまで持ち上げるつもりは無い。参加ミュー ジシャンのファンや、ザ・フーのファンに対し、「一聴の価値はありますよ」と言うに留めておく。
1. The Seeker / Cast
キャストは、ザ・ラーズのベーシストだったジョン・パワーが結成したバンドである。インタビューでは、ピート・タウンゼンドへの敬愛の念を何度も口にしている。選曲が「ザ・シーカー」(探求者)というのも合点が行く。
演奏の方だが、オリジナルよりも低音に重点を置いたアレンジになっている。ドラムは、キースというよりはジョン・ボーナムに近い。そういえば、ジョン・パワーはレッド・ツェッペリンのファンでもあったのはず。なお、ジョン・パワーのボーカルにエコーが効かせ過ぎになっていることが少々残念ではある。
2. Anyway, Anyhow, Anywhere /
Ocean Colour Scene
オーシャン・カラー・シーンは、マンチェスター・ブームの頃、そのフォロワーとしてデビューしたバンドだが("Yesterday
& Today"はもう入手不可能なんだろうか?)、2ndアルバム以降は、R&BやR&Rをベースにしたモッズ・バンドとしてのイメージが強い。ギタリスト(スティーヴ・クラドック)がポール・ウェラーのバックバンドを務めていたせいかもしれない。
演奏の方は、オリジナルよりもスローテンポになっている。歪んだハーモニカやくぐもったボーカルが目立つ(個人的には、このエフェクトは疑問である)。オリジナルでも顕著であった、ノイジーなギターは、ここでもしばしば登場する。トレブル・ベースも、ザ・フーのカバーなんだからということで納得できる。ただ、全体的に何か物足りないような気がする。
3. Circles / Paul Weller
シングルのB面曲を選ぶとは、さすがポール・ウェラーといったところか。何と言っても、スティーヴ・ホワイトのダイナミックなドラミングに尽きる。ザ・フーのカバー作品で、中途半端なドラミングをやって欲しくないというのが、個人的な願いだからだ。もちろん、ポール・ウェラーのボーカルも良い。
4. Pictures Of Lily / David
Bowie
裏ジャケットには、「若手の」と書いてあるのに、何故ボウイが(それを言ったらウェラーも同じか)。いや、出来は悪くないのである。オリジナルよりも大きくテンポを落とすなんて、英国の若手はやりたがらないだろうし、それにもまして、オペラ風のボーカル(コーラス)なんて、ザ・フーとボウイの共通点が発見できて、大変良いことだと思う。他にも、中間のインスト・パートの奇妙な音("Stylophone"と言う記載があるが、これのことか?)も気に入った。
ということで、歌詞を無視すれば、ボウイのこの作品は良いのである。しかし、思春期の悩みは何処へ行ってしまったのだろうか。
5. The Kids Are Alright / Pearl
Jam
パール・ジャムは、90年代の米国バンドとしては、名実ともに5本の指に入る存在であろう。それはともかく、エディ・ヴェダーは、「四重人格」を支えにして10代を送ったと言われており、昨年のザ・フーのライブで唄った「アイム・ワン」も非常に素晴らしかったと思う。
だが、はっきり言って、これは選曲ミスだと思う。なるほど、演奏自体はまとまりがあるし、悪くは無い。しかし、エディ・ヴェダーのボーカルが、いまいち説得力を持っていないのである。パール・ジャムならば、「フーズ・ネクスト」以降の曲を選ぶべきだったのでは? 特に、批評性という観点から見たら、「バイ・ナンバーズ」以降の曲を是非演って欲しい
6. The Real Me / Fastball
確か、ファストボールは米国のバンドであったと思う。彼らのコメントによれば、「この曲は難しいからこそやりがいがある」そうだ。確かに、難しい曲である。
演奏の方は、オリジナルよりもギターを強調したアレンジになっているが、ベースとドラムも健闘している。インスト・パートでのドラミングが少々単調なきらいもあるが。
重要なことではないが、ボーカルの声質がオジー・オズボーンに似ていると思ったのは、筆者だけであろうか。
7. Naked Eye / Unamerican
全く未知のバンドである。クレジットによれば、昨年のザ・フーのツアーに帯同したらしい。演奏の方は素晴らしい。まず、ボーカルが良い。一番では、フォーク・シンガーのようなつぶやき唱法を披露する。それが二番になると、ピートを意識してか、ハイトーンで唄っている。どちらにしても、エモーションがストレートに出ている。他にも、ベースとドラムのコンビネーションが良いし、繊細なギターも良い。まるでライブ録音のような雰囲気が出ている。
8. Who Are You / Stereophonics
まさか、3ピースバンドがこの曲を選ぶとは驚きだ。なにしろ、この曲のオリジナルでは、ギターではなく、シンセサイザーが大活躍していたのだ。つまり、聴くまでは、こちらとしても不安が大きかったのである。
しかし、それは良い意味で裏切られた。シンセサイザーもギターも非常に良いではないか。両者共に、昔の音を出すのではなく、今風の音を出している点にも好感が持てた。もちろん、ドラムも良い。やはり、今英国で最も勢いがあるバンドだからこそ、上手く行ったのだろうか。
なお、バッキング・ボーカルでオアシスのオエル・ギャラガーが参加している。
9. 5.15 / Phish
フィッシュのような、インプロビセーション主体のライブを繰り広げるバンドを「ジャム系」というのだそうだ。確かこのバンドは、ある時は「四重人格」の完全コピーをやったことがあると聞いているが。
収録されたのもライブ・バージョンであるが、彼らならば、それが当然と言うものだろう。ここで聴ける演奏も、素晴らしい。特に、ボーカルの無いインスト・パートにおける緊張感が良い。
10. Behind Blue Eyes / Sheryl
Crow
ビートルズと異なり、ザ・フーの曲を女性がカバーすることは非常に珍しい。それはさておき、シェリル・クロウの場合、「アメリカの田舎で暮らす女の子」というイメージが、幾つになっても変化しないようだ。確か既に30代後半のはずだが、ここで聴ける歌声も、少女の雰囲気を残している。フィオナ・アップルやアラニス・モリセットの方がずっと年少のはずだが。
さて、彼女の歌声以外では、プログラミングによる音が中々面白い。
11. Substitute / The Who
Featuring Kelly Jones
昨年のロイヤル・アルバート・ホールで行われたライブをそのまま収録したものらしい。
蛇足であるが、本作のタイトルである"Substitute"は、勿論ザ・フーのヒット・シングルから採られているのだが、意味は「代役」である。となると、参加アーティスト達は、「我々はザ・フーの代役なんだ」という意図のもとにレコーディングしたとも考えられる。自嘲的なユーモアなのだろうか。
(2001-6-24)